黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経歴史戦の縦横無尽。

 6/3分です。「ラジオ深夜便」に萩尾望都氏が出演していてびっくり。萩尾ファンもそろそろ深夜便世代でしょうか。

【外信コラム】ポトマック通信 攻め落とされた首都近郊 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140603/amr14060303040001-n1.htm

 ワシントン支局の青木伸行記者。この欄は通ってる柔道クラブがどうとか、どーでもいいことを書くコラムなのですが、なぜか興奮して従軍慰安婦記念碑について語っています。バージニア州フェアファクス郡で設置された碑はまず、ワシントンD.C.のすぐ近くにあるという理由で重大なのだそうです。なんか、『大戦略』でもやってる気になっているのではないですか。また、郡議長らによって碑が設置されたことを《韓国系団体は、行政機関のトップを“攻略”し》と書いていますが(SLGでも『大戦略』ではなく『ときめきメモリアル』かな)、郡議長って行政トップなんですか? 米国の政治システムは州によって違いがあったりするので断言はできませんが、ニワカ調べによると、郡(カウンティ)には郡長という役職があって、常識的に郡議長は立法トップだろうと思います。郡長を郡議長と訳しているなら、それはあまりに常識がないでしょう。あるいは、青木記者は行政と立法の区別、三権分立の意味を理解していない可能性もありますが、まさかそんな北朝鮮と同レベルで民主主義を認識はしていますまい。
 《慰安婦は人身売買の犠牲者だ》という郡議長の認識は正しいもので、なぜ青木記者がそこに噛みついているのかもわかりません。産経「歴史戦」の主張によれば、従軍慰安婦は暴力によって強制連行されたのではなく、前借金などの経済行為によって身を堕としたのだ、ということになっていたはずですよね。金を払って人間の自由を奪ったわけですが、それを「人身売買」と表現することが、なにか間違っているでしょうか。で、人身売買があったということは、それは(性的)奴隷制なわけですが。《連邦政府・議会だけは韓国系に席巻させてはなるまい》とか、興奮した青木記者はいろんなことを書いていますが、もしかして興奮しているように見えるのは気のせいで、青木記者は柔道クラブ並みにどーでもいいことを書いているつもりなのかもしれませんね。そうでもなきゃ、こんな間違いや矛盾だらけのコラムにはならないでしょう。

【歴史戦】「慰安婦」像撤去訴訟 原告側は新たな代理人 抗日連合会に「シリコンバレー」の影 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140603/amr14060311050002-n1.htm

 もうひとつ、米国の従軍慰安婦記念碑・像の話。ロサンゼルス支局の中村将記者です。カリフォルニア州グレンデール市の碑を撤去せよ、と訴えている側が、代理人弁護団)を入れ替えざるを得なくなった、というニュースですね。いままでの弁護士が、訴訟を始めると同時に企業から次々と契約を打ち切られそうになり、やっていられなくなったと撤退したためだそうです。そんなもん当たり前の話でしょう。シリコンバレーの企業にしてみれば(もともとリベラルな気風のある地域です)、歴史修正主義者の代理人なんかと契約を結んでいたら、自分たちの社会的生命が危ないのです。それを、あたかも世界抗日戦争史実維護連合会(また「抗日連合会」とおかしな略し方をしています)の陰謀であるかのように書いていますが、維護連合会にそんな影響力あるものですか。常識でものごとを考えるという訓練をしていないから、陰謀論に飛びつくのです。《水面下で影響力を誇示しているもようだ》とか、もはや日本語になってないし。

慰安婦問題で本紙記者の腕つかみ「説明しろ」 アジア連帯会議、強制連行訴える - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140603/plc14060312390011-n1.htm

 こちらは国内。署名がありませんが、添えられた写真が是永桂一記者の撮影なので、文章も是永記者でしょう。従軍慰安婦問題を考える集会で腕を掴まれたそうですが、手を出すのはいけません。取材に来た記者が産経新聞の、それもよりによって「歴史戦」連載を担当していた是永記者であるとわかれば、胸ぐらのひとつも掴みたくなる気持ちはわかりますが、手を出すのはいけません。集会参加者側に落ち度はあるとしても、是永記者は「捏造」と指摘された連載記事の内容について、説明はしたのでしょうか。《取材にあたっては、資料代として1千円を徴収された》とか、記事にオチを付けている場合ではありません。つーか千円の取材費も出ないのか。自腹か。そんなに痛かったのか。