黙然日記(廃墟)

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産経「主張」の検証観。

【主張】「河野談話」検証 徹底解明し早急に見直せ(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140302/plc14030203170003-n1.htm

 産経新聞がまた、従軍慰安婦問題を根本的に理解していないことを満天下に公言しています。元従軍慰安婦本人への聞き取りも、当時としてはベストを尽くしたものでしょう。今年になって産経が言い出した「韓国側とのすりあわせがあった」にせよ、石原信雄元官房副長官の証言は《当然行われたと推定される》という憶測で、事務方トップの石原氏の知らないところで行われた、あるいは行われなかったことが明らかです。いまのところ証拠と言えるのは、産経新聞阿比留瑠比記者の入手した資料しかないわけです。
 よし、産経の主張するように、河野談話は曖昧な証拠に基づいて拙速に定められ、韓国側とのすりあわせも好ましくないものだったとしましょう。では廃棄して、従軍慰安婦に関する官房長官談話を出し直すことにします。それは当然、1993年以後の学問的成果を反映させたものでなければなりません。その後に集まった信頼に足る新証拠はすべて、従軍慰安婦募集の(広義の)強制性を示しています。実際に動いたのが民間業者だとしても、「軍や警察の方から来ました」という文句に逆らえる人が当時いたはずがありません。この事実を冷静に踏まえ、また、韓国をはじめとする諸外国からクレームが出ないようにする(それが談話の目的であるはずです)ことを考えたら、河野談話と寸分違わなくはないにしても、大差ないものになるしかありません。こういうのを無駄な努力といいます。無駄な努力になることがわかっていて国費を無駄遣いすることも許されません。「河野談話見直し」は、現実的には無意味なスローガンなのです。産経「主張」はそれがわかっているのかいないのか、わかっていないならもうアレですし、わかっていてやっているなら政治的キャンペーンのために事実を歪める行為です。いずれにしろ、ジャーナリズムの資格はありません。普通に考えてそこまでアレとも思えないので、後者なのでしょう。政治的な思惑のために事実を無視する姿勢が、ジャーナリズムとして厳しく問われています。