黙然日記(廃墟)

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古森義久氏の米中会談観。他。

米中首脳会談は大失敗 - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/3102990/

 ということにしたいのですね、わかります。
 ワシントン駐在客員特派員という身軽な立場になって、ますます飛ばしている古森義久氏です。米中首脳会談については「成功」「失敗」両方の評価が当然ありえるわけですが、その中で「失敗」という評価を持ち出して「米国の論調はこうだ!」と決めつける、古森氏が何十年来続けてきた手法が、こんにちになっても活かされています。さすがに恥ずかしいのか、今回*1は「米国にもいろいろな意見がある」とか、多少の言い訳をつけていますが。それで、今回の記事のソースにしたのがリグネットなる団体で、これがCIAのOB会というのですから笑ってしまいます。こんなことばかりやっているからCIAのエージェント(代理人)とか言われちゃうんですよ。また同時に、古森氏のCIA人脈も、もうOBにしか繋がらなくなっているという見方もできます。
 肝腎の米中首脳会談への見方ですが、バラク・オバマ米国大統領がサイバー攻撃問題を持ち出したことに対し、習近平中国国家主席は「我が国も被害者」として共同での対処を提案した、ということはすでに報道されています。これを、米国の最大の意図はサイバー攻撃問題の解決にあったのに空振りだった、この会談は大失敗だ、というのが前出リグネットの判定です。そもそもサイバー攻撃問題が最大の課題だったのか、という疑問もありますが、そんなもんその場で習主席が「はいそのとおりです、私どもが悪うございました」なんて認めるわけがないとは思わないのでしょうか。この問題を突きつけ、口先だけでも問題解決への協力を取り付けただけで、大成功だと思うのですが。そもそも今回の会談における最大の目的は両首脳の信頼関係を築くことで、米国側が演出したその目的は十二分に達せられたことは、全世界の衆目が一致するところです。米中デタントがとにかく気にくわないCIAや古森氏がいくら地団駄踏んでも、この事実は変わりません。

【正論】駒沢大学名誉教授・西修 憲法への忠誠は「国民の義務」だ+(1/4ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130612/plc13061203100005-n1.htm

 また「正論」欄に珍論が載っています。産経新聞社「国民の憲法」委員会メンバーだった西氏によれば、主権者国民が憲法を定めたのだから、憲法遵守、忠誠を誓う義務は当然生じるのだそうです。なにが「当然」なんだか、さっぱりわかりません。ドイツやイタリアの憲法では(ドイツは基本法だったはずですが)憲法遵守義務を課している、これはファシズムを経験した国としての反省だ、とか述べていますが、そういう認識をできる人がなんであんな憲法案を出せるのか、疑問でしかたありません。また、立憲民主国家では当然に憲法遵守義務が生じるなら、明文化する必要もなさそうです。
 一般法令の遵守義務が国民に当然に生じることは理解できます。これも当然すぎて明文化されていません。法令はすべて憲法に基づいて作られますから、結果として国民は憲法に縛られます。それで問題ないはずで、「憲法は権力を縛るものである」という大原則を無視することは許されません。例によって西氏は「それは古い憲法観だ」と主張しますが、典型的な詭弁です。また、国旗国歌の尊重や家族の尊重を憲法に記述しなくても、国旗国歌法民法ですでに規定され国民に義務として課せられているのですから(各論の是非はまた別の話として)、西氏や産経は憲法というものをいったいなんだと思っているのかという根本的な疑問が生じるところです。国家が国民に命令するものが憲法だと仮定すると、憲法が権力の形を規定していることと矛盾し、ますます「(産経の考える)憲法とはなにか」がわからなくなってきます。取引材料とでも考えているのでしょうか。

*1:Japan Business Pressの連載「国際潮流と日本」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37988 よりブログへの転載記事。