産経抄の豪快ブーメラン。他。
【産経抄】いまだ占領時代の感覚ぬけない朝日新聞(5月18日) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130518/edc13051803070000-n1.htm
しばらく誰天*1が続いたかと思えば、いきなり爆弾級の代物が投下されるのが、今の「産経抄」の面白さです。石井英夫氏が一人で書いていた時代は、(いい意味でも悪い意味でも)安定していたのかもしれませんが。
織田信長は毀誉褒貶あるが全否定はされない、ならば大日本帝国や日本軍だって歴史上で全否定されなくていいではないか、というのですが、十五年戦争における日本軍がなにかを成し遂げたのでしょうか。誉も褒もすべき点が見あたりません。旧日本を否定するのは中国や韓国だけではありません。旧連合国も現在のイタリアもドイツも、ファシズム日本を否定しているのです。それが現在の価値観外交です。なんだったら安倍晋三首相からドイツのアンゲラ・メルケル首相に、外交ルートを通して「かつての歴史を見直そうではないか」と持ちかけてみますか。すぐさまドイツから、日本の国際連合除名処分を求める決議案が提出されるものと思われます。産経の言う「反日」とは、そのぐらいの無茶苦茶なのです。
《慰安所を「日本政府による強制的な軍の売春システム」》と称するのはそのまんまで、証拠がないのは政府や軍が直接暴力的な連行をした証拠がない、という件についてだけです。慰安婦を「性奴隷」と表現するのも、韓国が始めたわけではありません。
《〔ジェン・サキ米国務省〕報道官は、占領時代の東京や沖縄などでの米兵の蛮行をご存じないのであろう》というのは、沖縄での蛮行をセカンドレイプし、東京での蛮行を誤訳による虚報で誤魔化そうとした*2産経新聞が言うことでしょうか。朝日新聞の報道を《占領時代の感覚》と罵倒していますが、朝日も産経にだけは言われたくないでしょう。《「嘘も百回言えば真実になる」のは本当である》というのは、もしかしてギャグでしょうか。産経自身が百回繰り返してきたことです。こんなにギャグをちりばめた「産経抄」の面白さは、やはり見逃せません。
【主張】自民の教育再生 教科書是正を期待したい - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130518/edc13051803090001-n1.htm
「主張」も、負けずにギャグの山です。《歴史教科書の一部になお根強くみられる偏向記述》《民主党政権で流れが止まった教育改革を具体的に前に進める自民党の取り組みを評価したい》《教科書における正確な歴史記述は、教育の信頼を確保する大前提》など、最初から最後まで笑いどころ満載です。しかし、笑ってばかりもいられません。そもそも、政権与党とはいえ一政党の取り組みをここまで大きく取り上げて礼賛しているのが、なんとも言えぬ奇観です。産経新聞はいつから自民党の広報紙になったんだ、といえばそれは創刊当時からですが*3、それにしても恥ずかしくないのだろうかと思います。
南京事件や従軍慰安婦問題を念頭に、自民党は《「確定した事実以外は本文に記述しない」》とする方針だそうですが、そんなことを言い出したら古代史なんかはなにも書けなくなってしまいます。なにより、産経系列の育鵬社教科書の冒頭にある神話記述が真っ先に削られるわけですが、理解しているのでしょうか。諸説ある中からより確からしい事実を見つけ出すことが学問(歴史学)というものであることを、子供たちが学ぶ機会にもなるはずです。そもそも諸説併記は『日本書紀』にも見られる史書のスタイルです。自民党と産経は、なにも理解していないとしか言いようがありません。
産経の教科書観や教育への観念にいちいちツッコんでいったらきりがないのですが、そもそも口を出すなよと一括しておきたくなります。