産経のウルトラナショナリスト観。
【米議会調査局報告書】安倍内閣の閣僚は「ウルトラナショナリスト」? 韓国紙も根拠、考証不足の米議会報告書+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130511/plc13051100070000-n1.htm
Apemanさんがすでにツッコまれていて*1、かなり重複すると思いますが、書いておきます。
前半の論理展開が面白いので、そこが見所です。ワシントン支局の、古森義久編集特別委員か佐々木類支局長の筆によるものと思われますが、後半に日本政界の反応が書かれていてここは政治部のだれかの筆らしく、そのために無署名記事になっているのでしょう。しかし連名でいいから署名記事にしてほしかったところです。
見出しに疑問符とかつけていますが、安倍晋三首相や下村博文文科相がウルトラナショナリストでなければなんなのでしょうか。「過去の一部言動を元にレッテル貼りしている」というのですが、そう判断される言動があったことは間違いのない事実です。ウルトラナショナリストでなければ、まさかバランスのとれた中道政治家だとでも言うのでしょうか。他人にはレッテルを貼りまくるくせに、自分の身内に(正当な)評価がされると逆上するあたりが、古森氏っぽいんですよねえ。あと、連邦議会報告書をソースにしているあたり。数日内に古森氏のブログに同内容のエントリが出たらほぼ間違いないのですが、いまのところはまだ佐々木記者の記事という可能性も捨て切れません。驚くほど飛躍した考え方をするあたり、この二人はそっくりなので。
いわゆる従軍慰安婦について、ヒラリー・クリントン前国務長官が「性奴隷」の表現を使うように指示したことにも文句を言っていますが、米議会報告書が米国務省の見解に基づいて書かれるのは当たり前で、ここでなにを逆上しているのかもわかりません。「性奴隷」の表現の元は韓国紙だ、この報告書は歴史認識が韓国の影響下にある、と断じていますが、クリントン氏も同じ認識に立っていることを忘れていますし、そもそも「性奴隷(Sexual slave)」の表現は、従軍慰安婦問題に関わる研究で広く使われているものです。このあたりの誤認は黒田勝弘ソウル駐在特別記者を思わせますが、英語圏で広く使われていた表現である事実を古森氏が知らないはずはなく(だいぶ昔ですがその件について論争しているのも見た覚えがあります。検索するとエロサイトばかり引っかかる、とか)、このあたりからは古森氏の記事ではないのかな、とも考えられます。ただ彼は平気で嘘をつく人ですからねえ。知っていてとぼけるぐらいはお手の物かもしれません。
後半の、日本の政治部が書いたと思われる部分もなかなかおかしくて、山口那津男公明党代表が「首相は村山談話を踏襲すると言っている」と発言したは、この報告書と関係あるのかどうか記事からはわかりませんし、わたしにはどうもこの発言はある種の嫌味ではないかと思われます。この一例しか「反論」を挙げていないのに、《不快感の表明が相次いだ》というのもおかしいですね。
村山談話「全て踏襲」=菅官房長官、安倍首相答弁を修正 - WSJ.com
http://jp.wsj.com/article/JJ11170107210590653833618812146652595293305.html
関連して。安倍氏はずっと村山談話見直しを表明していたのに、米国にちょっとつつかれたら、安倍内閣として村山談話踏襲を確認することになってしまいました。ヘイトスピーチ禁止や河野談話踏襲に続いてネトウヨや「正論」メンバーのみなさんははしごを外されっぱなしですが、この河野・村山談話踏襲のニュースを、産経新聞はいまだに報じていません。もう悲しくて悲しくて、どうすればいいのかわからなくなっているのかもしれませんね。産経記者のみなさんの心情をおもんぱかると、涙が止まりません。