黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経「主張」のメルトスルー。

【主張】福島事故2年 原発活用し生き残ろう - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130312/dst13031203460010-n1.htm

 昨日の「主張」で原発事故のげの字もないと思ったら、今日まとめて来ました。再稼働せよ、原発体制を再開せよと、言いたい放題です。論点は多岐にわたりますが、結論はすべて同じです。
 《まずは安全性が確認された原発を再稼働させ》よと言っていますが、原子力規制委員会の新基準では、現時点で基準をクリアしている原発は一基もありません。ここでもう、産経の即時再稼働論は破綻しているのですが、それには口をぬぐったままです。その代わりに原子力規制委を必死にdisっていますが。《規制委の本来の任務は、原子力発電の安全性の向上》という指摘は正しいのですが、稼働ありきではありません。停止することがもっともリスクに見合った安全性の確保だと判断されれば、全原発を停止すべきと判断するのが規制委の役割です。
 民主党政権が昨年の総選挙で大敗したのは事実ですが、原発政策によるものではないでしょう。まして《即時原発ゼロを掲げる政党も惨敗した》と書いているのは、どこのことだかわかりません。大敗した日本未来の党がかかげていたのは「卒原発」であって数十年スパンでの原発廃止ですし、「即時原発ゼロ」を掲げていた唯一の政党である共産党は、1議席減らしただけで「惨敗」の言葉には当たりません。「即時ゼロ=惨敗」というこということにしたい、例によって意図的で悪質な捏造としか考えられません。
 夏の電力不足に関しては、けっして冷夏ではなかったにもかかわらず、少なくとも2回の夏を乗り切りました。猛吹雪その他に見舞われた北海道の冬も乗り切りました。昨年夏に稼働していたのは関西電力大飯原発3・4号機のみですが、関西地区の電力も大飯原発抜きで間に合っていたという話もあります。また、産経「主張」は関西地区の電力不足を強調していますが、定期点検があるので少なくとも大飯原発3・4号機をこの夏も運転することは考えられません。それどころか、次の再稼働候補は四国電力だという風評を聞きました。この夏、関西では再稼働なしで乗り切り、昨夏に原発ゼロで乗り切っていた四国に再稼働が必要だというのは、理屈もなにもありません。再稼働ありき、だとしか思えません。
 民主党政権が残した(負の遺産ではなく)遺産である原発不要論は、電力料金の値下げを保証したものではありません。いつ誰がそんなことを言ったのか、産経「主張」には明らかにしてほしいものです。料金値上げ傾向は原発ゼロ論とともに(少なくとも原発廃止論者には)受忍されるべきものです。また、いずれにしろ廃止や事故補償を含めた原発のコストを真面目に計算すれば、従来の料金でやっていけないことは明白でした。料金値上げだけを根拠に原発廃止論を否定しようとする産経の論は、ここでも破綻していることがあきらかです。
 《民主党政権原発にだけそれ〔ゼロリスク〕を強要しようとした》というのも捏造で、リスクを正当に評価しただけのことです。原発のリスクがあまりにも高いことはあきらかですから。
 そして「主張」全体の見出しとして《混乱の元凶1ミリシーベルトを見直せ》を掲げています。除染目標の1mSvを20mSvにしろという、とんでもない論です。「CTスキャンで10mSvの放射線量を受けるのだから」という、本気で言っているのか判断に苦しむような論拠まで出しています。数分の検査で受ける10mSvと、日常の生活環境から受ける1mSvが比較になると、本気で思っているのでしょうか。産経の非科学性、ここに極まれりというべきです。脳がメルトスルーしているとしか思えません。
 《このままでは、日本は回復不能国難を招いてしまう》が結語ですが、原発稼働を続けることこそ、回復不能国難を招くと言うべきでしょう。