黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経編集長のヴァーチャル観。

【土・日曜日に書く】大阪編集長・井口文彦 リアルもバーチャルもない - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130224/crm13022403060003-n1.htm

 産経の大好きな警察礼賛です。「営利誘拐犯罪は割に合わない」という認識が普及したことはたしかに、誘拐事件と闘い続けた警察の功績であり、賞賛を惜しまないところです*1。そして今、「割に合わない」という認識を普及させるべきなのはサイバー犯罪であるという井口記者の指摘も、納得できるものです。ではこの記事が正確な認識に基づいているかといえば、とんでもない代物です。対比させるべきはリアルとヴァーチャルではなくて、リアル(空間)とサイバー(空間)です。リアルとサイバーの区別は明確ですが、それは地続きのものです。リアル/ヴァーチャルという対立軸を作った場合、サイバー空間はリアル側に含まれます。サイバーそのものが人間に対して仮想的な空間を提供するわけではないのですから。この区別が井口記者にはわかっていません。井口記者に限らずオールドメディアにはびこっているのでしょうが、特に産経の記者に目立つ気がするのはわたしだけでしょうか。先日、2月13日付産経抄*2でも、遠隔操作ウィルス事件をヴァーチャルと結びつけていましたが、あくまでサイバー空間における犯罪であり、ヴァーチャルが出てて来る余地はまったくありません。サイバー犯罪者の世界認識がヴァーチャルだ、というなら、身代金略奪を夢想する誘拐犯の認識もヴァーチャルです。こうした区別を認識できず、なんでもヴァーチャルヴァーチャル、「ヴァーチャルは悪である」とばかりに攻撃するのは、ヴァーチャル(と混同しているサイバー)に対する偏見からでしょうか。

*1:営利誘拐以外では、未解決の誘拐事件も多くあるのですがね。足利事件を含む北関東連続幼女行方不明・殺害事件とか。

*2: http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130213/crm13021303180002-n1.htm