黙然日記(廃墟)

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産経「正論」の到達点。

【正論】筑波大学大学院教授・古田博司 さらば市民派のきれい事の正義 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110926/trd11092602310000-n1.htm

 これは……。読みながら何度も息を呑みました。ちょっとまずすぎます。しかしいちおう、産経新聞「正論」編集部が掲載にOKを出した原稿なのですから、新聞に載るべき記事として扱うべきでしょう。
 全体を通してはなにが言いたいのかさっぱりわからない、理解不能です。ただ、全体的に強い「死」のイメージにとらわれていて、それが読んでいて寒気のする原因かもしれません。典型的な娘盗り神話類型である須勢理毘売命の物語を、「須佐之男命か死者の国に娘の魂を捕らえていた」と解釈しているあたり、ぞっとしました。出雲神話が現行の形で成立した事情を踏まえればありえない、予想外の解釈なのですが。もっとも、日本神話全体を歴史的事実とみなすつくる会一派の古田氏としては、「書いてあるとおり」が正しいのかもしれませんが……。
 「まじめ」というキーワードで生と死をとらえているのも、抽象的過ぎてなにが言いたいのか不明です。もしかしたら古田氏の身近に不幸があって、それを慰めているのかもしれませんが、事情がわからないので同情のしようもありません。
 後半になり、朝日新聞などの「市民派」への攻撃になって、ようやくまともに読めるようになります。ただ、前半とのつながりは不明なままですし、現実との乖離がひどすぎて、今度は別な意味で理解に苦しむような内容です。ただまあ、それは「正論」欄ではありがちなことなのでいいでしょう。
 ひとつだけ、わたしに思いつく解釈は、我々は今、「まじめ教」という新興宗教の(比喩ではなく本物の宗教の)誕生に立ち会っていて、この「正論」がその根本経典であるという可能性です。そう考えて読めば、これは宗教成立の要素を完全に満たした文章のように思えます。この「正論」に(理解を超えて)心を打たれた人は、つくば市を訪れて古田氏に教えを請うといいかもしれません。もちろん、決して薦めるものではありませんが。