黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経阿比留記者の恐ろしさ。他。

【政論】「無能な味方は敵より恐ろしい」 危機だからこそ首相退陣+(1/3ページ) - MSN産経ニュース 〔強調は引用者〕
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110404/plc11040421040017-n1.htm

 ああ、“保守”にとっての産経新聞のことですね、わかります。後ろ弾の、乱射乱撃雨霰*1ですからねえ。
 遅れましたが電子版では4日付。前回も言ったように、最近はタイトルを見るだけで「この記者かな」と思うようになってきたのですが、まさかこんなしばしば特定の記者だけが【政論】欄を担当することはないだろう、と思い、最後の署名を確認して驚きました。なんでこんなに阿比留瑠比記者ばかり書いてるんでしょうか。もう【阿比留瑠比の政論】とかの連載にしてしまえばいいのに。
 で、その阿比留記者の、まことに非常識な提案ですが。あるていど意表をついた発想で耳目を集めるのも新聞記者の仕事ではあるでしょうが、誰でも一瞬は考え、「いやそれはないな」と否定したようなことを言い出しても、あまり効果がないのと違いますか。やるならば、皆が否定した(それは非常識だ)という部分をひっくり返して店なければなりません。
 たとえば《菅首相でなければならない理由はない》と述べていますが、理由としては非常に弱いものです。誰が首相になっても危機は危機ですから、交代による混乱の方が問題だと誰もが思います。仮に、阿比留記者が連呼するように菅直人首相が無能だとしても、それを差し引いてさえ、という状況があるわけです。
 では、菅首相は無能なのでしょうか。阿比留記者は、避難所視察で不謹慎になりかねない冗談を言ったことを挙げています。つまらないニュースは知っているのに被害の様子をテレビで見ていないのか、と問い詰めていますが、わたしはおそらく、そのとおりだろうと思います。平時には政治家はよくニュースを見ます。「伊達直人現象」は大きく報じられましたから、当然見ているでしょう。たいていの人はもう忘れていると思いますが、特にこの報道で伊達直人の名前を知った世代の、全国の「伊達さん」「直人さん」にとっては、インパクトがあったはずです。一方、震災後に首相はテレビを見ていないのかと言えば、少なくともニュース番組1本を通して見るほどの余裕はないだろうと思います。ていうか、今の首相がテレビに貼り付いていると思う方がおかしいでしょう。他に阿比留記者が挙げている例にしろ、「不謹慎な発言があった」(解釈次第だと思いますが)というだけで、それだけの理由で無能だと言えるなら、なんだって言えそうです。

 では、菅首相がものすごく有能か、といえば、それはわたしも思わないのですが、それならそれで攻撃すべき点はあるので、この記事はまったく無駄な論に字数を費やしているだけです。
 菅氏は東京工業大学応用物理学科卒業で、具体的な専攻はわかりませんが、原子物理学や原子力について詳しいとされています。これは歴代首相の中でも例を見ない経歴で、こういう首相のときに最悪の原発事故が起きたのは稀なる偶然と言うべきでしょう。それだけでも、いま菅首相を交代させるのは下策だと言えます。
 ぶら下がり会見の件にしても、今、下手に首相がナマの発言をして、言い間違いなどを含めて国民に不安を与える可能性を残すのは、得策ではありません。発表や見通しはスポークスマンとして適任の枝野官房長官に任せ、首相は「メッセージ」を発するにとどめた方が、ベストではないにしても次善の策です。そのメッセージの内容がつまらない、というのは、また別の問題です(米大統領などは、スピーチライターの存在を明らかにしていますね)。
 要するに阿比留記者は、官邸を取材しながら菅首相の失政と思われるものを見つけられず、人格攻撃に徹しているわけです。さすが、5年前には官邸の崩壊に手を貸した張本人です。まったく、味方にとっては恐ろしい人物と言わねばなりません。


放射能漏れ】ネットの噂と乖離した被災地の実態 福島・いわき市+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110405/dst11040515080038-n1.htm

 口直し。鎌田剛記者による、良いドキュメンタリー記事です。普通なら特筆するほどでもないのですが、産経としては良い記事です。社会部は今のところまだ比較的まともみたいですね、乾正人編集長の下でも。

*1:日露戦争のときに新聞がよく使った表現。ちょっとした流行語になり、さらにパロディとして「感謝感激雨霰」という言葉が生まれた。