黙然日記(廃墟)

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産経抄のランドセル観。

産経抄】1月13日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/483719/
産経抄】1月13日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/110113/trd1101130252000-n1.htm

 ランドセルがテーマということらしく、もちろん「タイガーマスク運動」を軸にした話なのですが、先日の夫婦殺傷事件の被害者も孫のランドセル姿を楽しみにしていた、という展開に持っていくのは、ちょっと強引な気がします。もちろん、亡くなられた方の無念は察するに余りあります。最初の「伊達直人」氏が世間にインパクトを与えたのは、もちろんその名乗りと、クリスマスの朝というタイミングもさることながら、ちょうど新入生の関係者がランドセルのことを考え始める時期だったためもあると思います。最初の、クリスマスの朝というタイミングが絶妙すぎたので、第二、第三の「伊達直人」氏の行為にも拍手喝采を送りたいと思います。
 さて「運動」について。まだ組織だったものになっていないので「運動」と呼べるのかわかりませんが、《単なるブームで終わらせないように》という抄子の指摘にはまったく同意します。今のところ、運動ではなく「ブーム」にしか過ぎないような気がして、ニュースを見るたびに引っかかっているのですが、これは以前からわたしが述べている、「やらぬ善よりやる偽善」の典型かもしれません(うまい棒300本はさすがにどうかと思いますが)。この「運動」を継続させるために《施設に暮らす子供たちの現状を、広く社会に伝えるべきだ》という指摘も、重要なものだと思います。マンガやアニメの『タイガーマスク』で描写された孤児院と*1、現在の現実の児童福祉施設が違うことは周知されてもいいように思います。あくまで行政施設であって、寄付がなければ運営が成り立たないわけではありません(もちろん、善意の寄付は歓迎されるはずですが)。児童の救済を富裕層の善意に頼る社会システムと、行政が税金を使って保障するシステムの違いを確認することは重要でしょう。その上で、善意はどこに向けられるのがベストなのかという議論も必要かもしれません。もちろんそれが、児童保護施設にランドセルを贈るという結論になるかもしれませんし、他の団体へ寄付を振り分けた方がいいということになるかもしれません。たとえば、あまり言いたくはありませんが、ユニセフの活動もほとんどは具体的な児童保護のために行われているわけです。また、以前の報道による記憶なので正確ではないかもしれませんが、現在の児童保護施設では生活困窮による保護より、児童虐待からのシェルターとして保護されるケースが多いという話も聞きました。そうした側面も含めて、様々な現状をメディアがきちんと報道してくれることを臨みます。こうした各種の問題については、産経は比較的まともな報道をするのですが、教育や社会保障と隣接した問題でもあるので、油断していると産経イズムがそこここに入り込んで来かねません。そういう意味でも、しっかりした報道がなされているか、期待はしつつメディアに対する監視が必要なところです。

*1:同じく主人公が孤児院育ちである『キャンディ・キャンディ』も、少し下の世代の女性には同じぐらいの人気があったと思うのですが、こちらの影響を聞かないのは不思議な気がします。ポニーの家はあまり哀れっぽい描写ではなかったからでしょうか。