黙然日記(廃墟)

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産経「主張」、人が疲れてるのに長文を書かせる。

 あらためて、深く黙祷いたします。

終戦から65年 「壊れゆく国」正す覚悟を - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/428219/
 眼前には夥(おびただ)しいモラル破綻(はたん)と政治の劣化などに象徴される荒涼たる光景が広がる。

 ああ、ジャーナリズムのモラルが破綻しきった自称全国の存在や、口先だけ威勢よくて実はまともな実行力がまるでない(なくて幸いですが)自称真正保守による劣化した政治ごっこという荒涼たる光景ですね、わかります。あ、これは2010年8月15日の産経新聞「主張」です。
 軍人・軍属・民間人併せて約310万人の死者に言及した直後、そのうち軍人だけについて「英霊たちの思いを今の日本人は汲み取っているのだろうか」という、まことにありふれた右翼的言説を並べていますが、民間人の思いはどうなっているのでしょうか。“英霊”となった軍人も、みなが喜んで死んでいったはずはないと思いますが、民間人にとってはなおさら理不尽な死です。こうした理不尽な思いは、もう二度としたくない、子孫たちにもさせたくないという誓いを再確認するのが、「終戦」記念日だとわたしは考えています。もちろんこの誓いは、戦争で亡くなった方々への慰霊と矛盾するものではなく、むしろイコールで結ばれるべきものだと信じます。
 そうした原点を忘れ、靖国神社の境内でメガホン握って大騒ぎする連中がいるような国を作ってしまったことは、たしかに残念です*1
 国のあり方が抜け落ちたという指摘で、真っ先に米国へのもたれかかりを挙げているのは、なんという自虐的産経史観でしょうか。「産経の史観」ではなく「産経史への観」です。っていうか「史」じゃなくて、リアルタイムでもたれかかっている、現にその直後に“日米同盟”の重要性を飽きもせずに説いているというのに、これは、なにをどうしたいという「主張」なんでしょうか。
 文中で、一方では上述のように兵士を“英霊”と扱いながら、後半では旧指導部の認識の甘さをあげつらう(そして現政権も同じだと八つ当たりする)のも、矛盾した話です。一般兵士は愚かな指導部の犠牲になったという認識があれば、“英霊”という表現は出てこないのではないでしょうか。
 まとめの文章、「いまの国難を打開するには」というのが、モラル破綻(冗談は別にして、大半のマスメディアに軽薄さや露悪趣味が見られることなど)といった側面についてであれば、「国民が総力を挙げて」解決するというのも一理あります。しかし、この文章の流れからすると、中国の軍事的脅威を「国難」としているようにしか読めません。「過去の指導部の愚かさから学べ」というここまでの話はまだ傾聴すべき点もあったのに、「過去の指導部の愚かさを真似ろ」としか読めない社説をこの日に発表することが、その愚かさの犠牲となった方々に対して、どれだけの無礼であるのか。ほんの少しでも思ったことはあるのでしょうか。

*1:あとですね……えろえろ同人誌を作りよりによってこの日に売り買いするのはどうなんだ、と言われると、たいへん申し訳ないとは思います。言い訳にもなりませんが、会場できちんと黙祷はしました。