黙然日記(廃墟)

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産経記者、前提を失う。

【土・日曜日に書く】政治部・阿比留瑠比 前提失った参政権推進論 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100404/plc1004040251006-n1.htm

 コメント欄で名無しさんさんにもご教示いただいていますが、4日付「日曜日に書く」は、名前の部分を隠しても一発で阿比留記者だとわかるものでした。
 文中で引用されている閣僚発言で、“強制連行”を根拠としているものは原口一博総務相発言だけです。仙谷由人国家戦略相の発言は「植民地侵略の歴史があり、その残滓」としているだけで、“強制連行”を前提にしているとは思えません。たとえば、東京で食い詰めた人間が札幌で働き口を見つけ、その地に居を構えて結婚し子供を産み、育った子供がまた札幌で就職しても、日本国内のことですからなにもおかしくはありません。同じように、大日本帝国内のソウルで食い詰め大阪で働き一家を構え、大阪に根付いた家族が、「戦争で大阪とソウルは別の国になったから帰れ」と言われても、困るだけでしょう。そうやって現在の日本国内に住んでいる人たちがいることが、植民地侵略の残滓であることは間違いありません。また、日本と朝鮮半島の歴史的経緯を括弧でくくって外に出しても、地方参政権を人権問題として議論することはできるのでから、阿比留記者の言い分は前提を失っています。そこからは正しい結論が出てこないというのは、この点については阿比留記事冒頭の指摘が正しいでしょう。
 以下、あいかわらずの「傍論」を振りかざす暴論とかもあるんですが、高市早苗衆院議員が外務省に請求していた資料が、ずっと「存在しない」と回答されていたのに最近になって出てきた、と記述されているところに、興味を引かれました。これは、密約問題を契機に外務省の資料に関する扱いが変わったためではないか、と想像するのですが、どうなのでしょう。もちろん想像に過ぎませんが、そのために真正保守高市議員や阿比留記者が恩恵を受けたとしたら、なかなか皮肉な話です。上述の、大阪に留まった家族の例は、仮にそのきっかけが事実上の徴用であったとしても「戦後、自由意志で留まった」と表現されますし、これは戦後政府の一種の言い逃れでもあるのですが、高市議員や阿比留記者はここを錦の御旗のごとく考えているようですね。