黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経抄、極端から極端へ。他。

産経抄】3月19日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/370409/

 2010年3月19日付です。テーマは、反捕鯨への反対です。鯨だけです。たまたま読者からビデオテープが送られてきたことと(テレビ番組を録画したテープの私的流通ってどうなんだっけ?)、『ザ・コーヴ』国内上映決定がモチベーションになったようです。しかし、それだけです。読み進めながらまさかと思ったのですが、ついに最後まで、捕鯨問題しか書かれていません。このタイミングで、まさか大西洋クロマグロ禁輸問題に一言も触れないとは。捕鯨問題を扱った論説ならマグロ問題を混ぜるのは慎むべきかもしれませんが、ジジコラムとしてこれで成立すると思っているんでしょうか。いらんときには自分でも扱いきれないほど多数のテーマを詰め込みたがるくせに、やることが極端すぎます。

春闘一斉回答 雇用確保にもっと努力を - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/369998/

 18日付「主張」。非正規社員の待遇改善という問題は、非組織労働者の待遇に労働組合組織がどこまで関われるかという問題でもあります。働き方の多様性を維持しつつ非正規社員の待遇を改善せよという産経の主張は、おそらく無理難題を突きつけているつもりでしょうが、非正規社員の組合を作ることで改善できる問題ではないでしょうか。そこに取り組まない連合への批判は当然あるべきですが、連合に対する批判のための批判をすることで、あたかも非正規社員の救済を強く求めるような内容になってしまっているのはお笑いです。
 しかしながら、です。「働き方の多様化や非正規社員の待遇改善など、いま解決しなければならない問題」ことがわかっているのに、翌日には問題をなにも理解していないことが判明します。

派遣法改正 角を矯めて牛殺すのでは - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/370411/
 厳しい労働環境に置かれている派遣労働者の待遇改善は労使で進めなければならない。法令違反が相次ぐ派遣業界への監督強化も必要だ。だが、こうした派遣労働をめぐる問題の解決と規制強化は切り分けるべきだ。
 日本経済の活性化に規制緩和は欠かせない。それに逆行する規制の強化は見直すべきだ。

 というわけで19日「主張」では、「派遣労働をめぐる問題」の最大のものが、一定の規制がなければ解決できないような性質のものであることを、理解していないとわざわざ満天下に表召してしまったわけです。満天下ってことはないか。発行部数180万部の新聞です。

夫婦別姓は家族崩壊をもたらす - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/370392/

 法学界でほとんど唯一、外国人地方参政権違憲とと唱えている百地章氏が、19日「正論」欄で、こんどは選択的夫婦別姓制を論じています。最初に「最大の問題点」として挙げられているのが「家族よりも個人を優先して考える結果、「家族の絆」を破壊」ですから、あとは「以下略」でもかまわないですかね。いちおう法学者らしく挙げている根拠は、世界人権宣言第16条3項 *1ですが、国際条約が夫婦別姓を禁止する根拠には、どう考えたってなりません。別姓が原則の国選択的別姓を認めている国もたくさんあるのですから。また、阿比留瑠比氏のブログでもおなじみの心の教育女性フォーラムによる調査*2が同じように恣意的に引用されていたりするのですが(制度が変わったら「変な感じがする」のは当たり前で、嫌悪感の表明ではないでしょう)、国連ユニセフの調査による、「孤独感を感じている子供が群を抜いて多いのは日本」という調査結果をわざわざ持ち出しているのはなんでしょう。自爆ですか。現状の、夫婦同姓が強要されている日本で子供が孤独を味わっているのが現状なら、夫婦同姓制度こそ見直されるべきではないという理屈になりませんか。さらに、自ら夫婦別姓選択を望む人の割合が5〜7%であることをもって、少数者の希望を叶えるために代償が大きすぎるとか言っているわけですが、国民の5%が必要としている制度を無視できると考える方がおかしいし(たとえば失業率も5%前後ですが、失業保険が必要ないと言えるでしょうか)、「代償」とやらは「家族の絆」とか「日本人の精神構造」(と百地氏が思いこんでいるもの)とかなのです。
 あとはまあどうでもいいんですが、「例えば祖父が「佐藤」、父が「田中」、その子が「小沢」などといった事態も生じうる」という例示だけはちょっと笑いました。孫は「竹下」で「小沢」は四代目ではないかと思いますが。百地先生は意外とユーモアのセンスもあるようですね。先の自爆事例といい。

*1:世界人権宣言(全文) | AMNESTY INTERNATIONAL JAPAN http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=908

*2:あびるんのエントリは http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1249889/d:id:debyu-bo:20091001:1254406471 なども参照。