黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経独占インタビューの虚妄。

外国人参政権 付与の法的根拠が崩れた - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/359765/

 20日付「主張」は、次に掲げる産経新聞スクープ記事(ていうか産経以外報じていませんが)を踏まえているので、関連記事を含めてセットで語りましょう。いわゆる外国人参政権*1についてです。

園部元最高裁判事が衝撃告白、参政権判決「政治的配慮あった」 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/dompolicy/359407/

 iza!ブロガーもずいぶんおとなしくなったなというか、この記事についたエントリがわずか38件(21日23:50時点。記事更新は19日00:35)ですよ。

外国人参政権判決は金科玉条ではない」園部元判事の証言要旨 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/dompolicy/359431/

園部元判事証言、参政権推進派には大きな打撃 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/dompolicy/359408/

 上は園部逸夫氏へのインタビューの「要旨」、下は小島優記者の署名による、解説記事です。小島記者は園部氏へのインタビューも行ったそうなので(後述)、今回の関連記事では主役なのでしょう。この「証言要旨」がいかに物凄い省略を経ているかは、下記で見ていきます。しかしそれでも、園部氏が「永住外国人地方参政権」そのものは認めていること、言い換えれば、この判例外国人参政権違憲とするものではないことは、さすがに省略できなかったようです。
 このインタビュー記事を見るだけでも、「政治的配慮」に言及しているだけで、「違憲」などとは言っていないわけです。しかし「主張」は「これにより外国人参政権の立法化の大きな根拠が崩れたといえる」と、まったく没論理的な結論に飛びついています。政治的配慮があったとはいえ法的には「違憲ではない」と解釈できるものを、政治家が政治的判断に基づいて立法することに、なんの矛盾があるのか、産経のころ没論理っぷりを問いただしてみなくてはなりません。

外国人参政権にかかわる園部元最高裁判事インタビュー - 国を憂い、われとわが身を甘やかすの記:イザ!
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1467498/

 GI17さん@コメント欄とb:id:amdgRCC:20100220:19431574さんのご教示によりたどり着いたのですが、阿比留瑠比記者のブログは、ときどき(資料としては)非常に役立つことがあって、このエントリには小島優記者による園部氏へのインタビューがほぼ全文転載されています。これを読むと、小島記者の記事は園部氏の発言から都合のいい部分だけを抜き出して強調していることがよくわかります。該当判決は基本的に、在日外国人の地方参政権を認める趣旨のものであり(少なくとも園部元判事はそのように考えており)、地方参政権を与えるべき「永住外国人」の範囲をどこまでと解釈するかの違いでしかないことがわかります。それこそ政治的判断、政治家が(ひいては日本国民が、ですが)判断するような差異でしかないわけです。
 阿比留氏は、重要な部分を太字で強調するといって、とんちんかんな部分を強調していますね。「これ〔主権が日本国籍所有者にあること〕がこの判決の中心部分」は、どう考えても「この裁判における判決(地方参政権を与えなくても違憲とは言えない)の中心部分」でしょう。位か、大量のとんちんかんな強調があるのですが、それは略します。
 「この傍論なる言葉を、どこの誰、どこのバカが覚えたのかしらないけど、やたら傍論、傍論と日本で言い出すようになっちゃった」「そこ〔「国民」と「住民」を憲法が区別していること〕がはっきりさせないと、後でわけのわからないことになる*2などが、わたしの見るかぎりではもっと重要な部分でしょう。わけがわからなくさせているのは産経新聞、小島記者や阿比留記者と「正論」メンバー、特に百地章氏です。インタビューの真ん中あたり(一問一答形式になる直前)で阿比留氏が強調している部分は、「判例はその時代に合わせて変えることができる」という当たり前のことを園部氏が説明しているだけで、現在の判例や法解釈とはまったく関係ありません。「ただし、そのときには韓国と日本が戦争になるよ」とも警告されているんですがね。


 産経がこの件ではしゃげばはしゃぐほど、気が滅入ってくるのは、なぜでしょうか(と、最初にここまで書いたところでずっと手が止まっていました)。何度同じことを言わなくちゃいけないんだという、苛立ちからでしょうかね。

*1:長いので「キャロット政権」と略していいですか? あ、やっぱだめですか。ていうかかえって長いし。

*2:この2カ所の引用部分では、いずれも直後の文章が中略とされています。いったい園部氏がどのような発言をしたのか、阿比留氏は「園部氏の個人的見聞、重い〔ママ〕などを一部割愛した」「おおむね趣旨は網羅できた」と言っていますが。