黙然日記(廃墟)

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産経抄の武道観。他。

産経抄】2月6日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/354416/

 「剣道」という呼称が定着したのは1919年以後、つまり20世紀に入って大正年間のことです。坂本龍馬は「剣の道」を意識していたのかもしれませんがが、それは「剣道」ではなかったでしょう。言葉の問題以外にも、龍馬は単に、相手を殺傷するための道具としては短銃の方が有利であり、剣にこだわる必要はないから、という合理的な理由で銃を使ったように思います。なお、相撲(角力)の由来は『日本書紀』『古事記』に見える野見宿禰当麻蹴速による格闘で、宿禰が蹴速を蹴り殺した(名前からすると逆っぽい印象がありますが)対戦から、とされているのは周知のとおりで、野見宿禰は相撲の祖として尊敬されています。相手を蹴り殺したにもに関わらず。雷電為右衛門が横綱になれなかったのは相撲で相手を殺したからという講談が生まれたのも、武道としての相撲道にも他者を傷つけてはならないという規範意識があったためだという説は、いささか怪しく思われます。
 さて、龍馬が持っていたのは、「剣(つるぎ)」でしょうか「日本刀」でしょうか。調べていませんが、常識的には当時、剣を持ち歩いていた浪士なんかいなかったわけで、日本刀だったのだろうと思います。靖国神社御神体は剣であって日本刀ではないとさんざん文句を言っていた産経で、この区別をしていないのは、きわめて恥ずかしいことですね。ん? 「剣道」には日本刀の扱いも含まれる? そうですね、現在たいていの場合はそうなっています。実際に物を斬れる日本刀(真剣)の扱いは、剣道の高段者が修行の一環として使うだけと制限されています。両刃の剣(つるぎ)と片刃の日本刀の総称として、ひとつのカテゴリとしての「剣(けん)」という概念があるわけで、御神体が日本刀そのものではない、という反論になんの意味があったのかと思わざるを得ません。

朝青龍引退 「相撲道」へ仕切り直しを - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/354417/

 こちらの「主張」でも、相撲道がどうたらいう話がメインです。朝青龍関の「不祥事」が横綱にふさわしくないと言えばそうなのでしょう。こういうところに関しては、実はわたしはどちらかというコンサバティブなのです。ただ、「相撲道」以外の部分にそれを持ち出すことには反対です。圧倒的な体力と豊富な技を持つチャンピオンが並み居るライバルをなぎ倒す姿はスポーツ興行の醍醐味の一つで、朝青龍関は(最近衰えが見えてきたとはいえ)その役割を十分に発揮してきた功績者でした。ただ、スポーツマンシップに欠けるところがあったのも事実です。たとえば「サッカー道」なんてことは誰も言いませんが、試合前にフェアプレイを誓い、試合中は倒れた相手に手を貸したり中断のために蹴り出したボールをお返しし、試合が終われば肩を組んでユニフォームを交換するのが、サッカーにおける「礼」とされています。そうした「礼」を守らないとき、審判が笛を吹くかどうかは競技のルールにもよりますが、大相撲にスポーツの側面と相撲道の側面があるのなら、スポーツとしてのルールの中に「相撲道のルール」を明文化し、たとえば5秒以上の睨み合いは行司か審判が警告するといったルールを作ることで、問題のかなりは解決できたのではないかと思われます。「相撲道」を本当に守りたいなら、そうしたことまで考えるべきではないでしょうか。
 ところが産経「主張」の「道」に関する考えは、こうした合理性とは無縁らしく、昔は中学在学中から入門してしごかれるのが普通だった、そうやって「相撲道」を身につけた、みたいなことを礼賛しているわけですが、その行き着く先が、しごきと称する暴行による傷害致死事件だったことには、目をつぶっていませんか。相撲に限らず、ヨットスクールなどにも見られた類型ですが、産経がそういう「教育」を批判することはありませんよね。

橋下知事3年目 高支持を結果につなげよ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/354418/

 6日付、もう1本の「主張」です。近年における「改革派首長」の代表格として橋下氏に注目しているのか、それとも大阪新聞の流れを受けているからかはわかりませんが、全国紙で府知事の動向を毎日伝えているのは、産経だけでしょうね*1。その、財政支出特に職員給与を削減すればすべて善という「改革派首長」の流れの中から、竹原信一阿久根市長なども出てきてしまったわけですが。
 まあこの「主張」のポイントはそこではなく、「産経新聞が1月に行った府内有権者ネット調査で、橋下氏の支持率は83・2%に達した」のところです。