黙然日記(廃墟)

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産経「主張」、ミスリードに失敗する。他。

壁崩壊20年 冷戦残る地域に同盟必要 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/322539/

 10日付「主張」のタイトルを、「まだ冷戦の残る地域で当事国どうし(日中や南北朝鮮など)が同盟を組むことが必要だ、そうすれば冷戦は終わる」という意味かと一瞬思ってしまいました。ロシアのサミット参加、東欧諸国のEU加盟などが冷戦終結の果実だったことは言うまでもありません。「枠組み」に参加させることには、重要な意味があります。もちろん産経がそんなことを言うはずもなく、中身は例によって日米同盟教の布教活動なのですが。
 米国が、冷戦終結後しばらくは「唯一の超大国」として君臨しながら、21世紀になって凋落し多極化した世界の一極になったことは、産経も認識しているようです。しかしその指摘をした直後に、「日米同盟の再確認」を挟んで「問題は、鳩山由紀夫政権にこうした歴史認識と現実的な世界観が備わっているのかどうかだ」とか平然と言っていることです。この筆者は、改行キーを2回押すとそれまでに書いたことを忘れてしまうのでしょうか。

外国人参政権 「違憲」の疑い論議尽くせ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/322489/

 これも10日付「主張」。外国ニンジン政権については、5日の衆院予算委で稲田朋美議員が鳩山首相に質問し、いよいよ本格的に政治日程に上ってきました。この稲田質問で「憲法15条違反だ!」と決めつけられた鳩山首相が言葉に詰まった姿が、おもしろおかしい説明とともに、あちこちに貼り付けられています*1。反論できなかったというより、予想もしなかったことを言われてうろたえているというように見えましたけどね。大政党が法案として持ち出そうとしているものですから、法務部会のようなところで十分に検討されているはず、と普通に考えていたのに、弁護士でもある稲田議員があまりに自信たっぷりに言うものだから、わけがわからなくなってしまったのではないでしょうか。
 どうでもいいんだけど(よくないけど)、稲田質問のビデオは憲法15条の部分を観ただけだったのですが、今確認を兼ねて流していたら、「対馬問題」(存在しない問題を一部の人たちが問題化しているだけなので、鍵括弧に入れておきます)も国会質疑に持ち出していたんですね*2。同じ日に質問した下村博文議員も国旗・国歌問題だったそうですし、極右化した自民党は産経ネタべったりということかと思うとうんざりします。
 稲田質問の話が長くなってしまいましたが、憲法15条と1995年の最高裁判決については、「外国人に参政権を与えても違憲ではないというのは傍論で、本論では明確に否定されている」と堂々と言い張る人が数多くいます。この「主張」も、「本論部分では、憲法93条で地方参政権を持つと定められた「住民」は「日本国民」を意味するとして、外国人の参政権を否定している。」と書いています。これはミスリードを狙ったのでしょうが、一歩踏み込んでしまっているのではないでしょうか。判決時点の(今も継続していますが)法律で参政権が賦与されていないことは違憲ではない、という二重否定であって、参政権賦与が違憲であるとは書かれていません。この二つの命題が矛盾しないことは、多少でも論理がわかる人なら理解できるはずです。わたしが夜食にバタートーストを食べずにいることは違憲ではありませんし、食べても憲法違反ではありません。問題を指摘するならもっと他の、さらにメタボる気かとかトーストは朝食にしろとか、そういう方向から否定しなければ、「何言ってんのこの人?」と思われるだけでしょう。