産経「正論」、専門を極める。他。

【正論】住宅一軒贈るに同じ「子供手当」 - イザ！
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/287066/

　というわけで、いろんなことの張本人である竹中平蔵氏が、7日付の「正論」欄に再登場です。いずれ選挙が終わったら、もう一人の張本人にも出てきてもらえませんかね。
　張本人として一貫している点だけは偉いもので、自民党の公約に対しても、バラマキだ大きな政府だと批判しています。一方で民主党に対しては、「口を極めて」と表現していいぐらいの非難を浴びせています。
　民主党案の子ども手当が、子供3人で総額約1500万円、地方なら家1軒分になるというのは単純な算数ですが、たしかにそのとおりです。「子供が増えればその分だけ広い家に住めるんだなあ」と考えれば、ときめきいっぱい夢いっぱいですね。これ以上の少子化対策はないでしょうね。そうでなくても子育てには費用がかかるので、ほとんどの場合は補助された分だけ消費に回るでしょう。バラマキをバラマキとだけ批判して、その効果をまったく考えていないことについては、新自由主義信奉者として筋を通してきた竹中氏に敬意を表してそのままにしておきますが、現実に収入が少なくて子供どころじゃない、という人々に対して、大きな影響を与えることは確実でしょう。そうしたワーキング・プアを生み出したのは誰か、というのもとりあえず別にしますが、竹中氏が挙げている例は、子供がいない世帯から豊かで子供が多い世帯への所得移転だけで、逆の場合にはまったく触れていません。しかし、収入その他の条件が同じ世帯なら、子供が多ければ多いほど費用がかかり、実質的には貧しくなるのです。こんなことはミクロ経済学の基本、という以前の、普通に常識レベルの話だと思うのですが、マクロ経済学の専門家である竹中氏としては、つい見落としてしまうような事実なのでしょうか。そういうのを「専門バカ」と言います。

【主張】「拉致」公約　北を動かす具体策を競え - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090808/plc0908080422001-n1.htm

　8日付「主張」です。中身は例によって、自民党えらい麻生さんえらい、民主党は弱腰だちゃんと制裁すると言え、というだけの代物で、論評には値しません。
　ただの公約と違って、マニフェストは「政権についたら必ずこれを実行する」という有権者との約束です。もしマニフェストに、なんの前置きもなく「経済制裁する」と書いてあったら、たとえ拉致被害者が全員帰国し核兵器とミサイルがすべて第三者の目の前で廃棄され、それどころか相手側政権が崩壊して国民が大混乱に陥っていても、経済制裁を続けなければならなくなります（理屈の上では、ですが）。
　民主党のマニフェストは「国の責任において解決に全力を尽くす」、自民党の“マニフェスト”は「国家の威信をかけ拉致被害者全員の帰国を実現する」と書いてあるわけですが、「お前らがバカなのか　有権者のことをバカにしてるのか　有権者のことをバカだと思っているのか　はっきりしろ!!」*1と言いたくなります。

今日の名言。

http://b.hatena.ne.jp/agricola/20090806#bookmark-15181146
「8月のウヨは3の倍数の日にアホになるなー。」

*1:セリフは氷川へきる『新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん(1)』（スクウェア・エニックス,2007,ISBN:9784757520448）p.12より、一部改変。