黙然日記(廃墟)

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産経「正論」、まだ過去の人を擁護する。

 なんかずるずると日延べして、やっと9日の記事にツッコみますが。

【正論】元駐タイ大使・岡崎久彦 未熟な「二大政党制」の犠牲者 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/229595/

 なにかと思ったら、いまだに安倍ちゃん擁護をやりたいらしいです。中川(酒)氏は野党のせいで忙しすぎたんだ、麻生氏も疲れているように見える、みんな野党が悪い、安倍晋三氏もあのままねじれ国会に臨んでいたらどうなっていたか、とか言っているわけですが(そもそもねじれ国会になったのはひとえに安倍氏の責任なんですが)、タラレバですか。直前のインド訪問も負担だった、と悪いことのように書いていますが、首相が外交をやらなくてどうするのか、元外交官に聞いてみたいものです。
 さらに岡崎氏は、安倍氏の病気を(辞任の理由はすっかり病気のせいということになっていますね)「疲労が持病(静養後特効薬が見つかって完治された由)を再発させたのである」と述べていますが、これは本当なんでしょうか。そもそも正式に病名が発表されていません。潰瘍性大腸炎(難病指定)という報道がありましたが、もしそうだとすると、現時点でも特効薬など見つかっていません*1。対症療法で押さえることはできるようですが、それなら在任中にも可能だったはずです。岡崎氏の言い分と違い、2006年8月の安倍首相は「内閣改造の案を練る」と称して、戦没者追悼式などの儀式と数日のインド訪問以外は、政治家としてなにもしていませんでした。病院に通うぐらいの時間はあったはずです。というか実際に通っていたのかもしれませんが、岡崎氏の言うように、辞任前はどうしようもなくて辞任後急に完治したなんて話には、いったいどういう根拠があるのでしょうか。潰瘍性大腸炎でなければ、極度のストレス性大腸炎だったのでしょう*2。ストレスの原因が取り除かれれば事実上完治するもので、こう考えればすべて了解可能です。岡崎氏が言うように、内閣総理大臣という仕事がたいへんなストレスを伴う激務なのは間違いありません。それに対応できなかった、と一言いえば済むだけの話なのに、なぜ事実と異なることまで書いて安倍氏を不必要にかばおうとするのか、言論人としてなんとも不誠実な態度だとしか思えません。

追記。(3/11)

 コメント欄でid:vanacoralさんにご指摘いただいて、見落としていたことに気づきました。岡崎氏は中川昭一氏についても「多少の抗ヒスタミン剤、少量のアルコールからも影響を受けるぐらい」と、「酒のせいではない」という本人の主張に基づいた同じような弁護をしています。先日わたしは、依存症について詳しい精神科のドクターと話す機会があり、その際に中川氏のことを訊ねてみたら、「あれは明らかに酒。眠くなる薬でああはならない。飲んじゃいけないときに我慢できなかったり、『飲んでない』と言い張るようになったら完全な依存症」とのことでした。

*1:期待される新薬はありますが、まだ開発段階のようです。http://members.ld.infoseek.co.jp/ibdgroup/uc.html

*2:以前も書きましたが、これはわたしも同病なので相憐れむ立場ではあります。