黙然日記(廃墟)

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産経、天皇制論議に踏み込む。

 三が日は関連記事のオンパレードだったものの4日付はおとなしかったので、正月企画だったのかな、と思ったのですが、連載企画【天皇陛下ご即位20年】をはじめ、まだまだ続けるつもりのようです。

産経抄】1月7日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/210312/

 天皇制について、様々な議論があることは周知の通りです。改憲まで視野に入れた上で、一方には廃止論があり、もう一方には陛下や皇族方が積極的に政治に関わられることを望む意見もあるでしょう。あるいは、現憲法下でも政治的ご発言は許される、なさるべきだという意見も、存在していいと思います。しかし少なくとも現状において、天皇の政治利用が認められることはあり得ません天皇を現人神と見るか、一個の独立した人格を持つ人間であると見るかという前提の違いを問わず、また天皇が自ら政治に関わられることを是とする立場からでもその反対の立場からでも、陛下ご自身以外の者が「天皇」の名を好き勝手に利用することは、どう考えても認められません。それは、先の大戦で日本人が得た最大の教訓の一つであり、人類の歴史すべてを顧みても例外なく得られる結論です*1。それにもかかわらず、産経は「天皇の政治利用」を続けるつもりのようです。
 ついでに細かいところ。平成以後20年間の日本政治を中間総括するなら、それは「55年体制が崩壊する過程」だったでしょう。まさに1989年の参議院選挙以後の10年間は、自民党一党支配が崩壊する過程であり、その後の10年は自民党が単独政権を保てないことを確認するための過程でした。次の10年がどうなるかは予測できませんが、今年が大きなターニングポイントになる可能性は、非常に高いと感じています。あとなあ、てめえ、敬語ぐらいまともに使え。今上を呼び捨てにするようなサヨクならともかく、仮にも保守派を自認する新聞の看板コラムだろうが。*2

【主張】天皇ご即位20年 陛下の願いは国民の結束 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/210313/

 えー、なんかここんとこ呆けた日々を過ごしておりまして(もう松も取れるってのに)、昨日なんかほぼ一日の記憶がありません。そういう状態で今日の「主張」を読み始めたら、どうも既読の文章のような気がしてきて、これは本格的にやばいのかと不安になってしまいました。
 なんのことはない、石川水穂論説委員による1月3日付「土曜日に書く」を、産経自身が使い回ししていたのです。

 また、戦後50年にあたる平成7年夏、原爆投下された広島・長崎、悲劇的な地上戦が行われた沖縄、大空襲に見舞われた東京の4カ所で、戦没者を慰霊された。戦後60年の17年には、激戦の地、サイパン島を訪れ、多くの在留邦人が命を絶った「バンザイクリフ」などで、皇后さまとともに深々と頭を下げられた。

http://sankei.jp.msn.com/culture/imperial/090103/imp0901030252000-n1.htm

 また、戦後50年の平成7年夏、長崎、広島、沖縄、東京都慰霊堂の4カ所で原爆や地上戦、大空襲による犠牲者を慰霊された。戦後60年の17年には、激戦地のサイパン島を訪れ、多くの在留邦人や日本兵が命を絶った「バンザイクリフ」などで、皇后さまとともに深々と頭を下げられた。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/210313/

 他の部分も、段落の順序が入れ替わっているぐらいで、そっくりな内容が並んでいます。いや別に、いーんですけどね。石川委員の署名コラムとはいえ産経新聞社の著作物扱いなんだし、今日の「主張」自体をおそらく石川委員本人が書いているのでしょうし。いくらなんでも他の論説委員がこれやってたらやばすぎますよ。それにしたって、同じオピニオン欄で4日前の文章をここまで使い回すってのはねえ。今上ご即位20年についてこれ以上書くことがないんなら、他のこと書けばいいのに。今日は昭和天皇の、俗に言えば二十一回忌なわけで、先帝のご遺徳を偲ぶとか、なにかなかったのでしょうか。
 内容についてのツッコミは、当然ながら前回と同じになるので略します。


 天皇制に関するわたしの考えを表明しておく必要があると思うので、最後に述べておきます。わたしの立場は「現憲法支持」です。現憲法が、少なくとも第1条〜第8条が妥協と現実主義の産物であり矛盾を孕んだものであることは踏まえた上で、支持の立場です。

*1:ここでは君主による親政が悪いと言っているのではなく(個人的には反対の立場ですが)、「政治利用が悪い」という主張であることことを重ねて強調しておきます。最高権力者、たとえば内閣総理大臣本人が政治に関わるのはいいのですが、「総理はこう考えているはずだ」と名前を持ち出して自らの勝手な政治的判断を権威づけるのは間違っている、という話です。このようなやり口で国を誤った例は歴史上無数にあるし、9年ほど前に日本国でも実例がありました。

*2:……現在ご在位されている天皇陛下は「今上」とお呼びするべきで、「今上天皇」は呼び捨て、と判断しずっとこうお呼びしているのですが、もしかして間違いだと言うことならご指摘ください。腹は切りませんが謝ります。