黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

広がる対馬キャンペーン、他。

 毎日更新のはずなのに、なぜか隔日ペースになっております。なんかものすごくいいわけくさく見えるかもしれませんが、昨日いっぱいで書き終えたものをアップしようとしたらネットの不調でテキストがぜんぶ消えてしまいましたorz *1。あらためて一から書き直して、29日分も兼ねさせていただきます。

対馬

【主張】国境の島 防衛への論議を深めたい - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/190594/

 28日付「主張」です。28日の自民党会合(下記参照)に合わせての掲載ですが、会合での結論が出る前に総評しているわけです。結論を待つ必要がなかったんですね。予定調和というか最初から出来レースだったわけですね。――と、28日の時点では書いていたのですが、実際に下記の記事を読むんでみたら、想像以上のマッチポンプでした。
 日本列島が6859の島(本州北海道九州四国を含む)から成り、海岸線の長さが約3万4千キロメートルになることを根拠に離島防衛の重要性を言うのですが、そのうち、瀬戸内海などの内海や湾に属する海岸線はどのぐらいあるでしょうか。ちょっとこれは資料の見当もつかなかったのですが、島の数で弾き直してみます。6855のうち瀬戸内海に727 *2です。有明海にある島の数も正確な情報は見つけられませんでしたが、熊本県に属する島が178、長崎県に属する島は日本一多くて(日本海側も、もちろん対馬島も含めて)971です*3長崎県有明海側にある島を仮に半分と見ても、熊本県と合わせて660ほどとなります。この二つの内海だけで、日本全体の島の数の約20%を占めます。防衛に関して考えれば、「約3万4千キロメートル」というのはいささか誇大な数字ではないでしょうか。
 自衛隊基地の隣にホテルが建っていたからと言って、なにがどうなるというのでしょうか。有事のときにプライベートビーチから軍艦が出撃して攻撃されるとでも思っているのでしょうか。偵察を警戒しているのかもしれませんが、基地にしろホテルにしろ、外から覗けるような構造になっていたら、その方が間抜けです(何度も言いますが、当たり前です)。東京近郊でいくつかの自衛隊基地の近くを通りましたが、周辺には高層マンションが林立していましたよ? 
 「対馬が危ない!!」の話に戻るのですが、あらためて読み直してみると、実際に韓国資本に買われた不動産はホテル1軒・釣り宿1軒・民宿約15軒という数字しか出てきません。これを、島全体の土地が韓国系に買収されたかのように言い立てるのも、話をかなり大げさにしていると言われてもしかたないでしょう。いくら土地を(商取引として)買っても、その土地が別の国の領土になるわけではありません。固定資産税などは日本国に入りますし、日本人名義や韓国人特別永住者が不動産から上げた利益も日本国が課税することになります。
 そもそもなにを問題にしたいのかすら、考えるほどわからなくなってくるキャンペーンなのですが、しっかりこれに便乗する、あるいはマッチポンプの一端を担う人たちがいるわけです。

対馬が危ない】「韓国資本、実効支配も」 自民研究会議員団 現地視察へ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/190864

 28日夜に配信された、朝刊用の記事でしょう。日本会議議員懇談会 真・保守政策研究会による問題の会合を、問題の連載を書いた宮本雅史編集委員と社会部遊軍の池田証志記者*4による連名で報じた記事です。
 ニュースらしいところは、ぞろぞろ視察に行く方針が決まったことぐらいなのですが、会合の冒頭で産経の宮本編集委員が基調講演したとか、いろいろ面白い記述が多いので、記事に出てくる議員の名前を列挙しておきますね。記事では、この時期に議員の選挙区をいちいち書いているのが嫌らしいですが、もちろん略します。
 中川昭一会長(金融担当兼財務相が、「総選挙すらできない」と称する忙しさの中で何やってるんだか)以下、古屋圭司議員(上の「主張」とまったく同じ例を引き合いに出しています)、山谷えり子議員(「日本の領土を守るため行動する議員連盟」会長だそうです。しかしどこにでも出てくるなあ……)、稲田朋美議員(不動産の取得過程に刑法違反の疑いがある、とか言い出しています。刑事事件なら原告側弁護人になって敗訴記録を重ねることはないので安心ですね。検察不受理で終わります)、戸井田とおる議員(地方参政権を持ち出しています)、平沼赳夫議員(最高顧問、視察を提案。新党を諦めたのでヒマになったのでしょうか)、武藤容治議員(この問題で、国民に「理解を求める」ではなく「話していく」と表現しているのが興味深いですね)といった面々です。他に、麻生太郎首相が、「合法的なんでしょ?」と述べたことについて名前が出ています。


 図書館に寄るついでがあったので、紙面を確認したら、なんとこの記事が今日の1面トップ扱いでした。紙面の方では宮本編集委員の基調講演に言及していなかったと思います。出席議員の一覧もあったので、これは入力しなければ、しかし面倒だなあと思っていたら、iza!の方で配信されているのを見落としていました。うわぁ、産経さんって親切だなあ。選挙区のことといい、なにかの意図があって列挙しているのかもしれませんが、落選運動リストにも応用できるというのは産経さんにはナイショですよ。

「離島問題等固有の領土保全緊急会議」に出席した議員名
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/190865

(敬称略、五十音順)

あの人。

【集う】米バンダービルト大・日米研究協力センター20周年パーティー
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/190560

 あいかわらず、この【集う】という記事は面白いですね。バンダービルト大学といっても(日米センターに興味のある人以外は)あまり知名度がありませんが、センター所長がジム(ジェームス)・アワー氏と聞けば、思い出す方も多いのではないでしょうか。産経新聞の「正論」欄や古森義久氏の記事で長年おなじみでしたが、昨年11月の防衛庁汚職事件に名前が出て、いちやく一般の知名度を上げた人物です。日米防衛利権の黒幕的存在として。
 吉村英輝記者によるこの記事は、パーティーそのものよりアワー氏の経歴や実績を照会がメインになっています。もちろん事件のことは書いてありませんが。出席者として名前が挙がっているのは長島昭久議員のみです。

似非科学誕生の瞬間。

【正論】筑波大学名誉教授 村上和雄 ノーベル賞と「進化」の不思議
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/190895/
特に私が興味をもったのは、宇宙の始まりは、極端に秩序のとれた状態であったというくだりだ

 29日付「正論」は、そろそろおなじみになってきた、天理教信者の村上名誉教授です。「科学の成果を理解することなく、それっぽいところだけ抜き出して宗教的に解釈してしまう」のが似非科学ですが(俺定義ですが大筋違わないかと)、それが誕生する貴重な瞬間を目撃した気分です。別に今回誕生しなくても、以前から村上氏は熱心な似非科学の伝道者だったわけですが。
 ある本にあった引用部の記述から村上氏は、今の宇宙全体にも秩序がある、それが進化の神秘だ、と説くのですが、元の文意をまったく理解していないのが明らかです。というのは、タイトルにもあるように今年のノーベル物理学賞の話から始めているのですが、その内容を理解しているなら、引用部のの「初期宇宙の秩序」という概念から「自発性の破れ」自発的対称性の破れ*5という概念が出てこないはずはありません。たとえ元の本が、そうした記述のない似非化学的な書物であったとしても、ここでおかしいと思わないのは、少なくとも南部理論・小林益川理論をまったく理解していないということです。あとはそのまま、上述の俺定義に当てはまりますよね。

*1:何度か痛い思いをしているので3重体制でバックアップしていたはずなのに、よりによってという感じで全部無効になっていました。

*2: http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN6/mame/topic3.htm

*3: http://www.pref.nagasaki.jp/toukei/kids/_sima/sima_index.html

*4:社会部なのになぜか国会記者クラブに所属し、こうして政治記事を中心に書いているようです。記者blog( http://ikedaa.iza.ne.jp/blog/ )では、映画『靖国』に関する調査報道を(上映中止圧力をなんとか正当化する方向で)あいかわらず続けています。

*5:コメント欄でのご指摘により、恥ずかしい間違いを修正。