黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経、反米自主武装に舵を切る、他。

【主張】海賊制圧 海自活用し国際責務担え - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/187797/

 ソマリア沖海賊問題について、知る限りもっとも熱心な日本のメディアは産経新聞でした。海賊がいるから対テロ作戦への無料給油を続けなければならないという、常人には理解しがたい論法に基づくものでしたが。
 そして今日の産経「主張」は、17日の国会で民主党長島昭久氏が提案したソマリア沖海賊船への対策に、諸手をあげて賛成しています。この提案は、インド洋給油とは別に(給油を停止しても問題なく)海賊対策に海上自衛隊を活用しようというものです。
 産経新聞はこれまで、インド洋給油と海賊対策はイコールである、海賊対策には給油継続しかないのだ、と主張してきたのに*1、従来の姿勢とどう整合性をつけるつもりなのでしょうか。少なくとも、海自エスコート案が海賊対策に有効な手段であると認めるなら、「海賊対策には給油継続しかない」という主張の誤りを認めるべきでしょう。
 ともあれ、これで給油継続と海賊対策のリンケージは否定されたわけです。従来、産経が給油継続にこだわってきたのは米国の意向が給油継続であることが大きいと思いますが、テロ支援指定解除問題もあって、いよいよ従米姿勢を改めようということなら、それはそれで結構なことです。*2

民主・鳩山幹事長、海賊対策に「海自活用を民主政権で積極検討」 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/187909

 しかし、民主党の方もなにを考えているのか、ちょっとわかりませんね。国連PKOなどに基づかない単純な海自派遣案は、従来の憲法解釈とも民主党マニフェストとも矛盾するものなので、いろいろ検討が必要だろうと思います。個人的には、どうしても派遣するならソマリアPKO参加がいいと思うのですが*3、長島議員や鳩山幹事長の発言にはそうした前提がありません。二人とも民主党内ではタカ派とされていますが(長島氏は櫻井よしこ氏が理事長を務める国家基本問題研究所の理事)、この時期にこんな話を持ち出さなくてもなあ。

【麻生政権考】自分のことは自分でやろう - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/187764

 榊原智・産経新聞政治部記者がSANKEI EXPRESSに書いたコラムです。テロ支援指定解除がよほど堪えているらしく、もう米国は当てにならない、自主武装だ、核武装も考えろ、自民党改憲案はまだ専守防衛とか寝言を言っているからもっと過激な政党が出てくるのを期待する。という、なんだかまあ。いちおうは新聞の紙面に、新聞記者の肩書きで、こんな文章が載るようになってしまったんですねえ。榊原記者の「○○政権考」(毎年題名が変わります)は毎回かなり面白いのですが、阿比留瑠比記者や花岡信昭客員編集委員のように人気が出ないのはなぜでしょうか。

「自民に失望」7割、「民主に期待」5割…読売・早大調査 - YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080116-907457/news/20081018-OYT1T00550.htm
自民党に失望していると答えた人が69%に上ったものの、民主党に期待しているという人は50%に過ぎなかった。
 「麻生自民党小沢民主党か」の政権選択となる次の衆院選を前に、有権者の目に、両党はいずれも積極的に政権を託したい政党とは映っていないようだ。

 これはひどい。調査結果全体を見ると、どちらもさほど期待されていない(どちらかといえば自民への失望が大きい)のはたしかですが、50%の支持を「〜に過ぎなかった」とする読売のこの文章はいったい。
 調査結果の数字自体も、いろんな意味でたいへん興味深いものです。自民党民主党両党への「期待している・期待していない」が、それぞれ48%〜50%の範囲でそろっているあたりは、偶然でしょうか。自民党に失望しつつ期待している人が2割いる、という集計結果ですが、いったいどういう質問をしたのでしょう。

*1:参照記事は多すぎて貼れません(笑)。このblogを「海賊」で検索してみてください。

*2:海自派遣そのものの是非は別に考えるとして、ここでは産経「主張」の矛盾に注目しています。ただし、後述の榊原記事のような方向へ行くなら、それもまた困った話なのですが。

*3: d:id:pr3:20080822:1219416470 参照