黙然日記(廃墟)

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さんけい「せいろん」とさんけんぶんりつ。

【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081001/stt0810010343001-n1.htm

 佐々“昔の名前で出ています”淳行氏が、「世襲内閣のなにが悪い」とかなんとか言っているのですが、わたしにはまったく理解できません。どうしましょう。
 まずひとつ、民主党が提起している、国会議員百人前後を副大臣政務官として各省庁に送り込む政策は、佐々氏によれば「憲法の定める立法・司法・行政の三権分立の大原則に抵触しかねない暴論というべきだろう」なのだそうです。
 あのー、わたしなんかの考えることより超エリートである佐々氏のおっしゃることの方がたぶん正しいはずなのですが、どうしても理解できないのです。国会議員による省庁のコントロール憲法の大原則に抵触するなら、「行政のトップである内閣総理大臣は国会議員の中から選ばれる」とか「省庁のトップである国務大臣過半数が国会議員の中から選ばれる」とか、そういうルールも三権分立に抵触する憲法違反なものなんですよね? 三権分立というのは、それぞれの権力がお互いをコントロールする仕組みのことだと思っていたのですが、これは間違いで、三権はお互いにまったく関わりなく存立していなきゃいけないものだったんですね? 
 この百人送り込み提案は、英国の制度を民主党パクった 参考にしたものですが、佐々氏の理屈では、英国は三権分立も実現できていない、未熟な民主主義を抱える国家なんですよね? たしか、「民主主義のふるさと」という呼び方もあったはずなんですが*1


 で、本題である世襲内閣の擁護らしいものについてですが、安倍晋三福田康夫両首相(もちろん麻生太郎首相も含めて)の歴代世襲政権を「国民が〜選んだ」とか言われてもねえ。三年前、衆議院第一党として自由民主党を選んだのはたしかですが、えーと、安倍・福田・麻生首相を国民が選んだ? ここのところを読んで、この人はわたしとは別の世界を見ているんじゃないか、と思ってしまったのですが、どうなんでしょう。あるいはもしかして、自民党員以外は非国民という意味なんでしょうか。
 佐々氏はこの文章の最初の方で、世襲を理由にした内閣批判を「これは彼らの出自に対する逆差別ではないか」と言っていて、これは重要な指摘だと思います。閣僚の出自そのものを問題にするのではなく、組閣にあたってあまりに考えが足りない、とかそういう理由で批判するべきです。ここだけはよく理解できました。また、恵まれた家庭環境が無欲な権力意志を育む、という主張も、考え方として理解はできます。人間、五十六十になれば、子供時代よりも大人になってからの人生を重視されるべきだと思いますが。しかしそこから、「貴種」とか「DNA」とか「血は争えない」とか、どう考えても普通の意味で差別的な言辞を並べつつ、「選良」だのと民主政治を語っていて、なんかもう、どうにもこの人は理解できません。どうしましょう。

*1:もっとも、ぐぐってみるとこの呼び方は、ギリシア、イタリア、フランス、米国などにも使われていますが。