黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経涙目キャンペーン、米側を解釈する。

米の北朝鮮政策、マケイン、オバマ両大統領候補の考えは… - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/157748

 先日のエントリ id:pr3:20080627:1214576665 で、毎日新聞の類似記事を引いて「産経にはこういう記事がない」としたのですが、4日遅れでやっと出ました。毎日記事よりはやや突っ込んだ内容ですが、この4日間にあった目新しい情報はなにも含まれていないようです。

【政論探求】「忘れない」は別れ言葉 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/diplomacy/157553

 花岡信昭氏です。ぼんやり読んでいると、あれ、けっこうまともなこと書いてるなあ、実はちゃんとした人なのかなあ、と思ってしまいそうです。日米同盟はこれで終わりだ、的なことを花岡氏が言うとは思いませんでした。
 集団的自衛権憲法解釈として認めようというのは、長年米国が要求してきたことで、日米同盟の強化に関する最大の課題となっています。しかし、政府の懇談会がようやく憲法解釈にまで踏み込んで出した提言を、福田首相は棚上げしました。だから、お返しに拉致問題を無視されても仕方ないだろう、ということなのだそうです。こういう指摘はあまり見かけませんが、なるほどと思わせる読み筋です。……しかし、よく考えてみると、実はやっぱりちゃんと花岡氏なのでした。
 政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が提言を出したのは、6月24日のことでした*1。これを首相が棚上げした、と判断できるのは、少なくとも25日以降でしょう。26日に核申告書の提出があり、同日にブッシュ大統領が指定解除の手続きに入ったことを発表しました。表題の「忘れない」発言はこのときです。1日や2日前の出来事がこの判断に影響したのでしょうか。そもそも、ライス米国務長官の「核申告書提出があれば(拉致問題全面解決と関係なく)テロ支援国家指定を解除する」という発言が18日で、この時点であとは手続き上の問題だということが確定していたのですから、24日の提言とその後の首相の判断がどうやって影響を与えられると思ったのか、ちょっとこれは直接花岡氏に訊いてみたいところです。

「テロ」指定解除でブッシュ政権非難 ボルトン元国務次官 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/korea/157726

 古森義久氏です。対北朝鮮強硬派の筆頭で古森氏お気に入りの、ジョン・ボルトン元米国務次官(前米国連大使)が、今回の指定解除についてウォールストリートジャーナルに寄稿した、という文章でした。予定調和すぎて、ニュース記事と呼ぶのもはばかられますね。
 実は、最近コメント欄でE-Juさんのご指摘を見るまで気づいていなかったのですが、指定解除の判断について産経新聞は、ブッシュ政権への批判はしてもブッシュ大統領個人への批判をしていません。悪いのはライス長官とヒル次官補で、大統領には一切関係がない、「大統領ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」というわけです。もちろん言うまでもなく、最終判断は大統領が下しているのですが。この古森氏の文章でも、非難されているのは「ブッシュ政権」だけで、「ブッシュ大統領」にはいっさい言及がありません。またしょうもないことをしているなあ、と思いつつ、ボルトン氏の原文に当たってみます。

The Tragic End of Bush's North Korea Policy - WSJ.com
http://online.wsj.com/article/SB121478274355214441.html

 ……古森さんごめんなさい。ボルトン氏自身が大統領不可侵論者でした。もちろん、第一期ブッシュ政権で国務次官を務め、次は長官と思っていたらライス氏に横取りされたボルトン氏としては、なにか含むところがあるのかもしれず、産経のように単純な大統領崇拝だけが理由でもないのでしょうが。
 それにしてもこのボルトン氏の寄稿は、古森氏が英語で書いたと言われても信じてしまいそうな内容ですね。拉致問題の棚上げが日米同盟の危機を招くとか*2、そんな主張までそっくりです。ていうか逆なのか。古森氏の主張がボルトン氏とそっくりだと考えた方が、辻褄は合いそうです。

*1: http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/155747

*2:ただ、韓国人拉致被害者に言及しているのは、古森氏の文章ではほとんど記憶にありません。