黙然日記(廃墟)

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産経「正論」、奸をなす。

【正論】八木秀次 宮中祭祀廃止論に反駁する - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/150499/

 ふだんはどんな記事でも、中身を読んでからここで取り上げるかを決め、そのあとで見出しをコピペするのですが、この見出しは目に入った瞬間に食いついてしまいました(笑)。実際に読んでみると、いまだに旧皇族の復活とか言っているあたりでお腹いっぱいになってしまうのですが(さすがにもうY染色体を持ち出すのはやめたのかな?)、メインディッシュはこのあと、宮中祭祀の維持についてです。
 原武史明治学院大学教授が「現代」5月号に発表した祭祀廃止論に対して反論しているのですが、八木氏の引用を見る限り、原氏の主張もかなり無理のあるものです。貧困層を皇居に招いて食事を振る舞うという提案に、いったい何の意味があるのやら。しかしこれはあくまで、八木氏の引用から受ける印象です*1。それにしても「正論」欄で、ネットカフェ難民はともかくプレカリアートという単語を見かけるとは思わなかった。


 宮中祭祀について、わたしは実はわりと肯定的な立場なのですが、八木氏の論には賛同できません。おそらく原氏の主張は*2、祭祀すべての撤廃論ではなく、軽減すべき、というものでしょう。いくつかは簡略化しいくつかは省略してもいいではないか、ということなら、両陛下や皇族方のご負担を考慮して、検討には値します。いくら「伝統」を強調されたって、近世・近代に創設された祭祀があることを、八木氏自身認めているではないですか。祭祀全廃は伝統に背くとしても、原点に返り最低限必要なものだけにとどめるという考え方を頭ごなしに否定するのは、形式主義権威主義というものです。権威主義とは、権威の保持者自身とは別の人間が、権威を利用したいときに持ち出すものです。
 祭祀を重視される今上の御心を、八木氏は勝手に憶測し代弁していますが、それが臣下のすることでしょうか。入江相政氏や富田朝彦氏の名を挙げて、今の簡略化提言の源流とみなしたり、さらになにやら陰謀の存在を匂わせるあたり、奸臣というのはこういうものなのか、と思った次第です。

*1:近所の図書館に「現代」も「諸君!」もなくて、今日はほぼネット記事だけを頼りに書いています。せめて雨が降ってなきゃなあ。

*2:原文を見ていないわけですから推測ですが、八木氏の引用だけからでも推測できる範囲で。