黙然日記(廃墟)

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nichijo_1さんへの返信。

 23日付の当方のエントリ*1に対して、「手記」のnichijo_1さんからTrackbackをいただきました。

自由への規制とポルノグラフィ - 手記
http://d.hatena.ne.jp/nichijo_1/20080527/p1

 ひさしぶりに反論らしい反論が来たので、最初はわくわくしていたのですが*2、よく読んでみると、困ったなこれは、と。
 まず、対象になった23日のエントリは我ながら言葉足らずだったと反省しています。25日のエントリ*3でいくらか補足したつもりなので、できればこちらも併せてお読みください。これでもまだ意を尽くせない部分が多いのですが、いまはこれがせいいっぱい。
 nichijo_1さんは、「理由にならない理由でエロゲ規制を求める人々(具体的には円議員らを経由して請願を出した人々)」に対して、批判的な立場なのだろうと思います。この立場は、わたしも共有しているつもりです。しかし、その立場から批判なさるという前提なら、持ち出している論理がその人々と同じであることには、お気づきなのでしょうか。


 引用して批評するスタイルは、最初の時点ではいいのですが、こちらが同じスタイルで再反論するとどんどん揚げ足取りになっていくので、控えておきます。
 ただ、恣意的な引用は困りますね。「他のあらゆる対立軸と独立して規制への賛成派・反対派が存在すると考えなければならない」とたしかに書きましたが、その直後に「実際には多少連関するところもあるのですがとも書いています。実際にはあるていど相関関係があるけれど、切り離して考えようではないか、「円議員は左だから規制派」「野田議員は右だから規制派」という論法で批判するのはやめよう、ということです。

 「エロゲ(に代表される二次元表現)」が絶対に必要というわたしのスタンスを異常だと判断されているようですが、異常ですよ。これは25日のエントリで言及しています。「異常(常と異なる)から排除する」という短絡さえされなければ、異常であることになんの問題もありません。*4
 ペドフィリアや二次元コンプレックスは、病気です。「ビョーキ」と表現することもありますが、普通の意味で「病気」です(しかし厳密に医学的な意味での病気とは限りません。ペドフィリアDSM-IVに規定されていますが、むしろ例外です*5)。そしてこれは、治らない病気です。虫垂炎は、虫垂を切り取れば治ります。しかし、心の一部を切り取って「治して」も(「病気」ではない状態にしても)、それは「患者」を治療したことにはなりません。「患者」が別人になってしまうだけです。それならば、対症療法でつきあっていくしかありません。

 nichijo_1さんは「エロゲの性的表現で苦悩する者」を持ち出し、わたしにその視点がないことを中心的に批判なさっているようですが、これがわかりません。「見るのが苦痛だ」という感情はあるでしょうが、これはお互い「見ない」「見せない」で解決する問題のはずです。「存在すると思うだけで耐え難い」ということなら(これは実際よく見かける主張なのですが)、それはもう個人の内面と内面の衝突であって、一般的に解決する方法はありません。
 ラディカル・フェミニズムを持ち出したあたりを読むと、エロゲに限らずポルノにおいて、概念としての児童(あるいは概念としての女性)を虐待・蔑視する表現があることを問題視されているのかもしれません。これはまさに日本ユニセフ協会などが“準児童ポルノ"の問題点として指摘しているところですね。しかしこれ、実はエロゲの、あるいはポルノの問題じゃないんですよね。一般のゲームや映画、小説などの表現物に表われ得る問題です。それぞれの作品を個別に批判するならともかく、束でくくって「そういう考え方を表現するな」と規制しようというのは、すべての表現への規制を肯定する発想です。
 25日付エントリのコメント欄でikeさんが興味深い指摘をなさっているのですが、この請願書の文章は「エロゲ」を「国家主義」などに置き換えても通用してしまうのですね。主観だけで根拠がないためです。繰り返しますが、「そういう考え方を表現するな」という主張は、少なくとも現代の日本においては、認めがたいものでしょう。


 貧困層云々のくだりは、さすがに言いがかりだろうと感じました。ダウンロード版なら3000円ていどで買えるもののようですし、質を問わなければワゴンセールで1000円とかあるんじゃないですか。それを一つも買えない人を考慮しろ、と言われると、目が点になってしまいます。そもそもそういう人は、パソコン持っていなさそうだし。
 また、わたしはずっと「エロゲに代表される二次元表現」の話をしていたので、雑誌で定価数百円、古書店のコミックスなら105円のエロマンガや、(ネットを使えば)無料で閲覧できるイラスト類なども含めていたつもりです。ずっと「エロゲ」と書いていたのは、該当エントリが「エロゲは必要なのか」という質問への返答を意図していたためで、きちんと読めばわかるはずのそうした背景を無視した批判は、その意味でも言いがかりだと感じざるを得ません。
 どうしてもそういうものを入手できない、欲求を代替できない貧困層の人がいて、その人が犯罪に走るかもしれない、という危惧でしたら、値段と関係なく入手不可能にしようとしている人々に対してこそ、それを言ってください。
 あとついでに言っておきますが、このblogで性的表現について意見を表明するのは、初めてとは言いませんが、非常に例外的なことなんですよ。わたしがそればっかり考えている人間であるかのように言われても、困ります。
 nichijo_1さんの文章が、わたしに対する批判ではなく、わたしのエントリを肴にして自説を開陳するものならば、それはそれでいいのです。これからもご自由に言及なさってくださってかまわないのですが、できればその旨を明記していただけると、こちらも無視できるので助かります。

*1:「エロゲ表現と人間性。」 http://d.hatena.ne.jp/pr3/20080523/1211554662

*2:某裁判関係者とのコメント合戦も、個人的には楽しみでした(話が食い違っていると指摘もされていて、それはそうかもしれないのですが)。コメントをご遠慮願ったのは、裁判関係者のふりをしていろいろ言ってくる、実際には無関係な人に対してです。

*3:「異常な世界観と『壊れた心』。」 http://d.hatena.ne.jp/pr3/20080525/1211727397

*4:という開き直り自体が、たぶんある種の人には異常に見えるんでしょうけどね。

*5:DSM-IVなど最近の精神医学では、「本人または他人が困らないなら、それは精神的な病気ではない」として、なにが病気であるかを定義しています。