黙然日記(廃墟)

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産経記者、あいかわらずマンガに無知。

【外信コラム】ポトマック通信 左から右への文化 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/gaishin/141848
意外な盲点だが、この障害さえ乗り越えれば、「MANGA」がスシやカラオケと並び、日本発の“英語”として定着する日も遠くはないようだ。

 ワシントン支局では比較的真面目に仕事をしている、有元隆志記者のコラムです。近所の子供が日本のマンガを読んでいるけど、右から左に読むことに慣れておらず混乱している、というような話題です。
 日本のマンガを欧米に紹介するとき、裏焼きして左開きにするかそのまま右開きにするかは昔から大きな問題でした*1。質については四半世紀前から世界でトップという自負がありながら、言葉の壁以上に「開き方の壁」のために輸出が進まないという事態に、国内のマンガも最初からすべて左開きにするべきではないか、という提案さえあり、真剣に議論されたものです。「意外な盲点」でもなんでもないんですね。今、マンガが右開きのまま欧米で受け容れられている事実を見ると、なんというか、隔世の感があります。
 そうした苦闘の歴史まで知るべきだ、とは言いませんが、"Manga"についてはどうでしょう。いまさら言うまでもないのですが、日本式のマンガは"Manga"としてとっくに英語の単語になっているわけで。現に、隣家が日本人家族とはいえ、それと直接関係なく、おそらくふつうの米国人の子供が、読み方の苦労を乗り越えてまで"Manga"を読んでいるわけでしょう。米Amazonのカテゴリにも、とっくに"Manga"が用意されています。

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http://www.amazon.com/gp/bestsellers/books/4367/

 この一つ上のカテゴリ、"Comics & Graphic Novels"*2を見た方がわかりやすいですが、"Batman""Peanuts"などに並んで、「NARUTO」が現在16位にランクインしています。
 「日本文化の国際化」をやたらに称揚する産経の記者が、これでは困りますね。

*1:1980年代後半から、マンガ家が絵を裏から見てデッサン狂いがないか確かめる習慣が生まれました。1991年の『燃えよペン』(島本和彦)にも描写があります。現在ではこのレベルでデッサン狂いがあるマンガ家はほとんどいないと思いますが、この背景には(80年代前半に流行った絵柄がその手のデッサン狂いを許容するものだったことに加えて)、輸出時に裏焼きすることを意図した出版社の指導があったのではないか、と考えています。

*2:"Graphic Novels"とは、「まんが」に対する「劇画」のような概念です。以前産経の記事でおもいっきり誤訳されていたので、念のため註。http://d.hatena.ne.jp/pr3/20070328/1175069282 参照。