黙然日記(廃墟)

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産経の報道姿勢と花岡信昭氏の見事さ。

産経の報道姿勢。

女子中生暴行の沖縄米兵を不起訴、釈放 米軍が拘束 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/126523

 他紙では「そっとしてほしい」という被害者側のコメントとともに報じています。典型的なマスコミとネットによるセカンドレイプ被害だと思うのですが、この産経新聞の記事は被害者のコメントをまったくスルーしています。
 「そっとしてほしい」というコメントを見たとき、たいていの人は(セカンドレイプという概念を知らない人でも)「報道被害のためだな」と思うでしょう*1
 一方、産経の報道だけを見た人は、「被害者側は理由も説明せず告訴を取り下げた、なんらかの理由はあるはずなのに」と疑問に思うでしょう。そこから「これには公表できない理由があるに違いない、つまり被害は存在しなかったのだ」という結論を導いてしまう人が、もしかしたら存在する可能性がないとは言い切れません。そうした誤った結論へと読者を導きかねないことについて、産経は考えなかったのでしょうか。あるいは、考えた上でこうした記事になったのでしょうか。
 そして驚くべきことに、他紙と産経の報道両方を見ているはずなのに、「被害はなかった」という結論を導いてしまう人々がいるのですね。
 そうした一部ネトウヨの反応、「告訴を取り下げたから被害はなかったのだ」という理屈を発明してしまう発想は、南京事件問題や従軍慰安婦問題、最近ではあたご事故に対するものと共通性を感じるのですが、そのへんの分析はわたしの手に余るので、他の方に期待しておきます。「セカンドレイプ批判をしたブロガーによるサードレイプだ」という理屈も発明されているようですが、数もかぞえられないこの手の人々による発想までは、ちょっと分析不可能だろうな。もしこれが3rd rapeなら、その前に(被害者批判側による)2nd rapeがあったという証明にしかならないのですけどね。*2

花岡信昭氏の見事さ。

 そういうわけで、マスコミ・ネット含め膨大な意見が表明されているわけですが、やはり注目されるのはこの人でしょう。

14歳少女に振り回された? - はなさんのポリログ:イザ!
http://hanasan.iza.ne.jp/blog/entry/498132

 花岡信昭産経新聞客員編集委員です。このblogエントリにはご本人による記事や関連エントリがまとめてリンクされているので、便利ですね。自分に不利な証拠を並べて、どうしようというのかわかりませんが。

米兵に誘われて無防備にバイクに乗ってしまう「しつけの欠如」はどういうものか、などと書いたら、すさまじい攻撃が来た。(中略)こちらは「大人の社会の常識」を述べたに過ぎない。

 それが「大人の社会の常識」ならば、わたしは大人になんかなりたくない――と言える歳でもありませんが。詐欺の被害者に「騙される方が悪い」、殺人の被害者に「刃物を持ち出すような奴と喧嘩する方が悪い」なんてことは、少なくとも人前では言わないのが「大人の常識」だと思って今まで生きてきました。ところがどういうわけか、痴漢やストーカー、そして強姦の(広く言って性犯罪の)被害者に対しては「被害者が悪い」と言ってのける人がおり、さらにそれを「大人の常識」と言い切ってしまう人までいるんですね。どうやらわたしは、「大人の常識」を身につけずに大人になってしまったようです。
 もうひとつ、「大人の社会の常識」について考えてみます。顧客や関係筋への配慮(あるいは直接的な圧力)があった場合、それに従うのも「大人の社会の(あるいは職業人としての)常識」と言われます。言論を「職業」とする新聞記者にとって、先方への配慮を考えながら商売道具を扱うのは当たり前。そういう意味で、花岡氏は見事な「大人の常識」を発揮したということなのでしょう。

訂正、および注記。(3/2)

 コメント欄でpipiさんから、産経新聞紙面には別の記事が掲載されたことを教えていただきました。
 同じくコメント欄でスガオカシさんから、文中の一部表現が被害内容を決めつけるものである旨のご指摘をいただきました。少なくとも現時点では真相が不明であることを、ここで確認するとともに、今後の反省といたします。

*1:ワイドショーを熱心に観ている知人などが、「あんなふうに取材されたら被害者の人も気の毒だわね」とつぶやくのを、何度か聞いたことがあります。それを観ている自分たちにも責任の一端が、という発想の有無はとりあえずとして、彼女たちに代表される一般の人々にも「報道被害という概念そのもの」はあるのです。

*2:擁護側であろうとネットで騒ぐことで被害者に負担が及ぶことは承知した上で、申し訳なく思いつつ、産経の報道をあえて指摘します。