黙然日記(廃墟)

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古森義久氏、朝日の見出しを批判する。

中国製毒ギョーザに対する朝日新聞の奇妙な社説――日本という「国」の概念がお嫌い? - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/471282

 朝日新聞の社説にいちゃもんをつけています。見出しの表現から、朝日の「国家嫌い」が明らかになった、というのです。
 該当の朝日社説はこちら。

中国製ギョーザ―食の安全に国境はない - asahi.com
http://www.asahi.com/paper/editorial20080201.html

 食の安全を守るためには国境にとらわれず、日本と中国の政府が協力するべきだ、という内容にしか読めないのですが。古森氏は中身を読まずに見出しだけ読んで批判ししているのでしょうか。ツカミのネタとして見出しにけちをつけ、そのあと改めて本文を批判するなり矛盾を指摘するなりということならわかりますが、古森氏は最後まで(曲解した)見出しの表現だけにこだわって話を進めていくのです。では本文を読んでいないのかというと、ちゃんと引用しつつ、最初の曲解に基づいてさらに曲解を重ねた批判を繰り広げていきます。見出しを元にいちゃもんをつける手法は、実はわたしもたまに使うので強く非難はできないのですが(笑)、本文への評価とは区別しているつもりです。
 また、BSE問題での米国産牛肉輸入禁止当時、朝日新聞は米国産牛肉の全面禁輸を強硬に主張し、相手国と協力して再発防止をはかる考えをまったく示さなかったと古森氏は主張していますが、そうでしたっけ? たしか、「全頭検査や月齢20ヶ月未満限定などの規制を(米国政府の協力のもとで)行ってから輸入するべきだ」という主張をしていたと思うのですが*1


 前提として古森氏は、「日本国は中国産食品の輸入を全面禁止すべきだ」と言いたいようですが、できるわきゃねえだろ。37万平方kmの国土と1億2700万人の人口と一定の質(現在よりは落ちるとしても)を前提にするかぎり、日本が食料を完全自給することはほぼ不可能です。あるいは、安全保障と同じように食料保障も100%米国に頼れ、というのでしょうか。いずれにしろそんなことは不可能なので、自給率の向上には努めつつ、バランスを保って各国から食料輸入を続けるしかないのです。もちろん、最も近い農業大国からの輸入を含めて。
 また古森氏は、伝染病にたとえて国境で食い止める重要性を訴えていますが、米国でなにかの伝染病が(たとえば西ナイル熱が)発生したから、米国人が日本に入国することをすべて禁止するという対策がとれるでしょうか。中国産禁輸論は、それに近いナンセンスな主張でしょう。入国審査や税関検査で、それこそ国境で食い止めるしかないのです。
 アメリカ合衆国は基本的に食糧自給が可能な国なので、中国産に依存しなくてもなんとかなるかもしれません。しかし、日本の事情はまったく違います。中国からの輸入を減らすことはできても、もはやゼロにはできません。古森氏は米国在住が長すぎて、日本のことを忘れてしまったのでしょうか。あるいは、米国産品のセールスマンを自認しているのでしょうか。

*1:朝日新聞社説 2004年6月27日 http://www.asahi.com/paper/editorial20040627.html 。これは問題発生直後の社説ではありませんが。