黙然日記(廃墟)

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古森義久氏、おなじみの陰謀論。

カナダ議会で慰安婦決議を推進した中国系パワー――おなじみ「抗日連合会」でした-ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/412966

 古森ウォッチャーがわくわくして待っていた、カナダ下院の従軍慰安婦問題非難決議に対するエントリが出ました。期待どおり、世界抗日戦争史実維護連合会(以下GA)のせいにしています。ついに見出しでまで印象操作の略称を使うようになりましたね。
 古森氏の記事としては、7月の米国下院決議から今回11月28日のカナダ下院決議に飛んで、11月9日にオランダ下院が同じく非難決議を出したことはスルーという結果になりました。オランダ語は読めないにしても英語で十分な情報収集はできたはずですし、どうしたことでしょう。オランダは慰安婦強制連行の被害当事国であることが明らかなので非難決議もやむを得ないと思ったのか、どうこじつけてもオランダ議会に中国系の影響があると言えなかったからなのか、そのへんは謎ですが。
 さて、今回古森氏は新しい切り口を出してきました。米下院決議では当時の安倍首相が強制性を否定したことへの非難だと言われていたが、福田首相になっても非難決議が続くではないか、というのです。福田氏は左派で媚中なのにおかしいじゃないか、だから安倍氏への批判は間違っていた、というわけですね。しかし、福田首相従軍慰安婦問題で積極的に発言していましたっけ? 「内閣として河野談話を継承する」ぐらいのところでしょう。これなら安倍前内閣とまったく同じ、というかずっと継承されているわけです。また外部から見て、日本では政権交代が起きたわけではありません。病気(という名目)で前首相が退任し、同じ政党・同じ派閥から後継者が出ただけです。その後継者が積極的に発言していなければ、前首相と同じ路線と見られても当然でしょう。
 また古森氏は、米下院決議に対して安倍氏は抗議しなかった、だから非難がやむかといえば決議が続くではないか、とも述べていますが、それで非難がやむと思う方がおかしい。抗議も謝罪もせずにスルーしているのだから、状況が変わらないのは当たり前です。ていうか、古森氏はいまだに、こんな屁理屈をひねってまで壺三を擁護したいんですかねえ。


 エントリ後半では、今回の決議を主導したカナダALPHAはGAのカナダ支部だとか、世界本部のGAは中国政府と密接だとか、事実関係を確認していないのかわざと無根拠なことを言い立てているのかわからないようなことを言っています。中国系カナダ市民に香港出身者が多いことを承知しながら、彼らも北京政府の影響下にあるようにも言っているのは、これはどういうつもりなんですかね。1980年代に香港返還が決定してから1997年の返還までに、多数の香港人が英連邦内部のカナダやオーストラリアに移住しました。なぜ彼らが移住したかといえば、中国共産党政府の支配を嫌ったからです。97年に国際報道に関わっていた人なら、このぐらいのことは当然承知しているものと思っていましたが、10年経って66歳になった古森氏は忘れてしまったんでしょうかね。
 ついでに書いておきますが、香港の対日感情、特に旧日本軍に関する感情は、決して良くはないようです。太平洋戦争開始と同時に香港を占領し、4年近く支配を続けていた間に、いろいろあったという話です。なぜか日本人の大半は忘れているようですが。そういう意味で、旧軍に対する非難決議に中国(香港)系の影響があった可能性はありますが、その背後で糸を引いているのが中国政府だという古森氏の断定は、いったいどういう根拠からなのか、知りたいところですね。