古森義久氏、印象操作を続ける。
【緯度経度】ホンダ議員への政治献金疑惑 ワシントン・古森義久-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/91023
米民主党議員多数に対するノーマン・シュー容疑者からの献金疑惑については、古森氏も何度も新聞記事やblogで取り上げてきたし、こちらもそれに対して論理のおかしさを指摘してきました。*1。事実関係の調査については警察や現地のメディア、さらに現地駐在の新聞記者にかなうはずがないのですが、こうして日本で出された1本の記事を読むだけで、おかしなところをいくらでも指摘できるのだから、黙っているわけにもいきません。
ツッコミどころがあまりに多いので、箇条書きにします。引用文→ツッコミの順です。
- 詐欺まで働いて私財を肥やしてきた人物が巨額の資金を単に寄付してしまうという行為は、背後の大きな資金源をも感じさせる。
ここで、他の資金源を持ち出す理由がまったく不明です。詐欺容疑が固まる前に中国政府が資金源であることを古森氏は強く示唆していましたが、状況が変わってもこの先入観を払拭できていないのでしょうか。
接点があることははっきりしていますが、その金額が総額5,000ドルということもはっきりしています。合計2,000,000ドルのうちの5,000ドルです。
- 違法性の強い計5000ドルを受け取ったこと
受け取った時点では、違法性が強いなんてわかりゃしません。
- 「世界抗日戦争史実維護連合会」の幹部たちから過去8年近い連邦議員歴で、ここぞという時期にいつも献金を受けてきた。
議員というのは「ここぞという時期」(具体的には選挙前)に献金を集めるものです。GA幹部からの献金だけが他の献金者とは違うタイミングで行われていたのでしょうか?
- ホンダ議員の選挙民の3割がアジア系という構図のなかでも中国系からの献金が突出していた。
アジア系米国人であるホンダ議員はアジア系米国人を支持基盤にしているので、献金者の多くもアジア系でしょう。「選挙区人口におけるアジア系の比率とその中の中国系の比率」と「ホンダ議員支持者の中のアジア系の比率とその中の中国系の比率」を比較して、それでも突出しているということならわかりますが、この文章は両者を(意図的に)混同させています。
- だが同時に6月25日というのは、下院外交委員会で慰安婦決議案への投票が実施された日の前日だった。
だからなに? としか言いようがないです。もしパーティーの日に現金で献金を受け取ったとしても、その現金を投票当日に他の議員に配って歩いたとでもいうのでしょうか。上記のツッコミと関わりますが、こんなタイミングで献金を受けてもなんの役にも立たないので、ちっとも「ここぞという時期」ではありません。
だから、民主党議員に幅広く献金されていたのですから、その中に共同提案者が含まれていてもちっともおかしくないのですが。共同提案者が最終的に約160人にも達したことを勘定に入れなくても、です。
「シュー被告」→「中国系勢力」へのすり替えを行っています。
- その報道記事は「本紙がシュー氏に関する取材インタビューを数回、申し込んだのに対しホンダ議員は一切、返事をしていない」と伝えていた。
この点に関してだけは、ホンダ議員への批判も正当だと思います。ただ、この引用が正確であれば、ですが。ところで、産経新聞はホンダ議員にインタビューを申し込んだことがあるのでしょうか?
全体として「(中国政府の影響を受けた)中国系勢力が米民主党に食い込んでいる」という印象を与えようとしているのですが、少し判断力のある人になら見抜かれて失敗するレベルのものです。いったい、古森氏はなにがやりたくてこんな文章を発表するのでしょうか。*2
この文章は、記事ではなくコラムの扱いです。記事として出すときには、いくら産経新聞でもなんらかのチェックが働くようなのですが、署名コラムについては本人の文責ということなのか、自由にテーマを選択できるみたいです。この矛盾と牽強付会だらけの文章を、記事として出すのは無理だ、さすがに産経新聞の沽券に関わる、という判断がどこかで働き、コラムとして発表することになったのでしょうか。それなら、恥を掻くのは古森“恥辱の殿堂”義久氏だけですからね。
*1: http://d.hatena.ne.jp/pr3/20070831/1188566008 、http://d.hatena.ne.jp/pr3/20070923/1190529050 参照。
*2:「古森 ノーマン・シュー」などでぐぐってみると、古森氏の記事を疑いもせずに垂れ流すブロガーなどが多く見つかるので、実際にはあるていど成功しているのかもしれませんが。さっきちょっと調べてみて、愕然としました。