黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

古森義久氏の世界観。

「日本軍の性的奴隷(慰安婦)は合計40万人だった」――中国系反日団体の会長が発表-ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/338910
2007/10/11 17:38

 古森さん、あんまり夜更かししちゃいけませんよ。もう無理が利く年齢でもないのですから。


 米国下院の決議を受けて、世界抗日戦争史実維護連合会(以下GAと略す)が開いた*1国際会議について、ロサンゼルス・タイムズが報じる内容から引用しています。あいかわらずソースにリンクしていないので、いちいち調べにゃなりません。

Activists seek redress for sex slaves - Los Angeles Times
http://www.latimes.com/news/local/la-me-women6oct06,1,5989059.story?ctrack=2&cset=true

 ざっと見た限りでは、古森氏の訳にあまり問題はないようです*2(わたしがなにか見落としている可能性はかなり高いですが)。ただ、古森氏が直訳で紹介している「日本軍事性的奴隷問題行動ネットワーク」"Japan Action Network for the Military Sexual Slavery Issue"というのはおそらく、「日本軍『慰安婦』問題行動ネットワーク」*3のこと、Haruko Shibasakiというのは同ネットワークに所属する柴崎温子氏のことでしょう。こんな、ぐぐれば5分でわかるようなことはちゃんと調べてから書いてほしいものですが、古森さんは眠かったのかもしれませんね。


 古森氏は、GAが各国でロビー活動をして決議を出させようと計画していることを、恐るべき陰謀であるかのようにまたぞろ訴えているのですが、計画することと実際に各国議会が動いて決議を出すことの間には、かなりの隔たりがあります。たとえば、なんの組織も影響力も持たない個人ブロガーのわたしが「全世界の議会に古森非難の決議を出させるぞー!」とわめいても、言うだけならタダです。
 ひとつ前のエントリとも重なるのですが、古森氏は《必要条件》と《十分条件》の違いを、理解していないのではないでしょうか。言葉としては混同されがちであり、わたしもよく勘違いするので今も辞書で確認してから書いているのですが、そういうことではなく、です。ある命題(ここでは決議)が成立するために、最低限必要なものと、それさえあれば命題が成り立ってしまうものの違いです。ロビー活動は、きっかけになったりあるていどの影響を及ぼしたりはしますが、それだけで決定的な結果はもたらしません。そこには各国議会の意志が絶対に必要なのです。*4
 あるいは、ロビー活動があれば従軍慰安婦問題非難決議が自動的に成立するという考えは、各国議会の意志を前提とせず、必要な過程も無視している点で、「藁人形に針を刺せば相手が苦しむ」という呪術的世界観のレベルに近くありませんか。

*1:註(10/12):コメント欄でni0615さんにご指摘いただきました。この会議に関して、GAに所属する参加者はいましたが、開催そのものには関わっていません(少なくとも直接名前は出ていません JMSS http://jmss.info/about.html)。お詫びして訂正します。

*2:註(10/12):やはり見落としておりました。コメント欄でStiffmuscleさんにご指摘いただきましたが、記事にとって都合のよい部分だけを抜き出しているという点で、問題のある恣意的な訳といえます。

*3: http://kodonet.blog54.fc2.com/ 。ただ、「日本軍『慰安婦』問題緊急行動ネットワーク」という検索結果もあって、改名したのか複数の名前を使っているのか、よくわかりません。

*4:その意志は、「日本の過去」に向けられるのではなく、「過去を直視しない現在の日本」に向けられているのだということも附記しておきます。