黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

古森義久氏の引用が謎。

小沢氏のテロ特措法反対「日米同盟に危険」-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/84841/

 16日付の記事なんですが見落としてました。これも http://d.hatena.ne.jp/pr3/20070916/1189931570 で紹介した記事に引き続き、小沢一郎氏への危惧が米国全体の論調かのような見出しですが、実際は一人の意見を紹介しているだけです。今回のターゲットはマイケル・オースリン氏。インタビューですらなく、雑誌「アメリカン」9月号に掲載された文章だそうですが、16日の時点で雑誌に掲載された“論文”が12日の安倍辞任表明を踏まえて書かれたものという説明は、ちょっと納得しがたいところです。日本の週刊誌でも13日発売の雑誌には間に合わず、14日発売のものがぎりぎりで、多少とも突っ込んだ記事は15日発売まで待たなければならなかったのに*1。というか、GoogleでもAmazon.comでも"American"という雑誌そのものが見あたりません。もちろん、一般的すぎる名詞で検索結果が膨大になるため100件ぐらいまでしか見ていないのですが、実在するとしてもよほどマイナーな雑誌なんじゃないの? あるいは、紙媒体の雑誌ではないのかもしれません。とにかく謎。
 内容的には特に触れるべき点もなく、乱暴に要約すれば「小沢が国連中心主義を採って米国を裏切ったら困ったことになるぞ(誰が困るのかは不明)、日本はずっと米国の奴隷でいろ」というだけです。古森氏の抄訳だけで論評してもまったく意味がないですね。
 オースリン氏といえば、参院選の最中に古森氏や石井英夫翁が執筆して物笑いの種になった産経新聞の連載「何たる選挙戦」の中で、古森氏が中心的に取り上げていたことでも記憶に残ります。

【2007参院選】何たる選挙戦(2)「醜聞・年金だけの争点は恥だ」-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/70810/

 古森氏が「shame(恥)」という単語を持ち出すと、どうしても「恥辱の殿堂(Hall of shame)」のことを思い出してしまいますが、それはともかく。今読み返すとこの記事は、オースリン氏が安倍首相(当時)を評価しているわけではなく、小沢氏を嫌いなだけ、という印象を受けます。その理由は要するに、小沢氏が日米同盟から離れようとしているからで、彼の意見をわざわざ何度も(今回の記事なんかほとんど意味があるとは思えない)採り上げる古森氏も、同じ意見なのでしょう。古森blogの異様な反小沢キャンペーンの理由も、そろそろはっきりしてきたようです。

補足。

 こちらの調査能力の低さを露呈するたびにコメント欄で補足をいただくので、あちこちに足を向けて寝られない心境です。逆立ちして寝るか。
 まず、雑誌"American"はオースリン氏の所属するAIEが刊行する雑誌:

Business, Economics, Culture, and More ? The American, A Magazine of Ideas
http://www.american.com/
AEI - About AEI
http://www.aei.org/about/filter.all/default.asp

 該当の記事はこちら:

A New Japan? ? The American, A Magazine of Ideas
http://www.american.com/archive/2007/september-0907/a-new-japan

 などを、本誌でApemanさんに、iza!別冊でBehemothさんにご教示いただきました。記事の日付は12日になっています(時差もあるでしょうが)。やっぱりオンライン版だったのか。
 そしてこれもBehemothさんからのご教示ですが、古森氏がそう明言しているにもかかわらず、雑誌「アメリカン」9月号には掲載されていないようです。(というか9・10月号のみで、9月号というものが存在しない)。

Table of Contents: September/October 2007 ? The American, A Magazine of Ideas
http://american.com/archive/2007/september-october-magazine-contents/table-of-contents-september-october-2007

 また、pipiさんからは毎日新聞NHKなども安倍辞任直後にオースリン氏のコメントを取っていることをご教示いただきました。他にもいろいろ情報をいただいたのですが、興味深いのは、古森氏が最初にオースリン氏の文章を引用した記事で、ワシントン・タイムズ(言うまでもなく統一教会系の米国版世界日報)の社説も同時に引用しているあたりです。

積極果敢な外交姿勢「米の利益」に 米、安倍首相歓迎の論調|米国|国際|Sankei WEB
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/061201/usa061201009.htm

*1:安倍晋三首相の辞任表明を踏まえて」という一文がなければ、かなりつじつまが合うのですが。