黙然日記(廃墟)

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古森義久氏の人脈が謎。

 空気を読むことが本当に正しいのか、というテーマは議論の余地がありますが、自社の紙面の空気を読めない論説委員として有名な古森義久氏の記事が、話題になっています*1。遅ればせながら、という感じですが、いろいろ検討してみます。

安倍首相、短期間に業績…米で高評価-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/84776

 そうか、米国では全体的に高評価だったのか、と思わせる見出しですが、実際はケビン・ドーク教授という人一人にインタビューしただけの記事です。そしてドーク教授の名前でぐぐれば一発でわかるのですが、産経新聞世界日報の記事ばかり出てくるという人物でもあります。いずれも靖国参拝の肯定論で、そちら方面で好んで引用されており、安倍晋三氏の『美しい国へ』も彼の靖国論を引用していたようです。
 平たく言えば、ドーク−古森−安倍の三氏で持ち上げ合っているだけですね。その舞台が産経新聞だけならまだいいのですが、どうして必ずのように世界日報(=統一協会)が絡んでくるんでしょう。
 コメント欄でpipiさんからまとまった情報をいただいているので、こちらに転載させていただきます。

ケビン・ドーク氏について。

国内紙では12回登場(07年9月16日の産経記事含む)。
うち10回が産経新聞、各1回はフジサンケイビジネスアイ、読売新聞。
産経新聞記事のうち、4回は古森氏、3回は有元隆志氏の記事。3回は本人の寄稿。
初出は古森氏の記事(05年5月14日)でコラム「緯度経度」。
ドーク氏は、日本の右傾化を懸念するニューヨーク・タイムズの社説を批判し
「この社説が述べる『力強い軍事的姿勢』とか『右翼のナショナリズム』とい
うのは、ただ否定的なひびきだけの意味不明な言葉です。日本の安保面での措
置は自国の防衛への従来の異例な制約を減らして、『普通の国』を目指すこと
に過ぎず、小泉氏を右翼扱いすることも日本の超少数の右翼がかえって憤慨す
るでしょう。靖国参拝も日本の防衛や近代化のために命を落とした自国民の霊
への追悼であり、戦犯の美化ではないことは日本国内では周知の事実だと思い
ます」などとコメントしている。

寄稿は06年5月25日から計3回、「靖国参拝の考察」のタイトルで掲載された。
そこで掲載されたプロフィールは以下の通り。

【プロフィル】ケビン・ドーク氏
 1982年米国クインシー大学卒業、シカゴ大学で日本研究により修士号、
博士号を取得。ウェークフォレスト大学、イリノイ大学の各助教授を経て、
2002年にジョージタウン大学に移り、同大学東アジア言語文化学部の教
授、学部長となる。日本での留学や研究も高校時代を含め4回にわたり、京
大、東大、立教大、甲南大などで学ぶ。日本の近代史を基礎に日本の民主主
義、ナショナリズム市民社会、知的文化などを専門とする。著書は「日本
ロマン派と近代性の危機」(日本語版題「日本浪曼派とナショナリズム」)
など。


 ドーク氏の言っていることもかなり物凄くて、「安倍首相は鈴木善幸首相より有名だ」とか(鈴木首相と聞くと"Zenko, Who?"「善幸って誰?」というフレーズを反射的に思い出すぐらい、印象が薄いことで印象的な首相だったのですが、なぜわざわざ彼を引き合いに出すのか)、「『美しい国へ』という著書で日本の長期の展望を明示した」とか(「美しい国」の具体的な中身を明示できなくて支持率を落とし、首相就任後半年も経ってから有識者会議を開催して中身を決めようとしていたんですが)、ああもう、ワンフレーズごとにそれに倍するツッコミが可能で際限がありません。
 たった一人のインタビューで米国の意見を代表させようというのも、本当に米国の意見を(少なくともある面で)代表できるような人、たとえば大統領とか国際政治学の最高権威である学者とか、少なくとも現役の政府高官とか、そういう人ならわかります。しかしこう言ってはなんですが一流とはいえない大学の若手教授、さらに言えば従来から産経新聞の論調にべったりで、かつこういう思いこみと事実への無知ばかりで発言する人の意見だけを、わざわざ紹介する意味があったんでしょうか。古森氏は、長年ワシントンに駐在していながら、いったいどういう人脈を作っているのか?という疑問がわいてきました。

*1: ni0615さん http://ni0615.iza.ne.jp/blog/entry/3014422ちゃんねるの関連スレッドなど。