黙然日記(廃墟)

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古森義久氏、原爆肯定論を肯定する。

 見出しは演出です。というかレトリックを使っていますが、事実でもあります。

【緯度経度】米国での原爆投下論議-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/71738

 13年前にCNNテレビの討論番組に出演したときの経験を例に引き、日本人がいくら言っても米国人は原爆投下を正当化し続ける、しかしあちらの主張としては理解できるという、レポートとも解説ともつかないようなコラムです。
 ふむ。どうしたもんでしょうかね。まず、「一般の米国人の多くは原爆投下肯定で、その根拠は戦争を終結させたからだと考えているためだ」という解説については、(周知のとおり)客観的に事実でしょう。そういう視点があることを紹介するのも、報道としては悪くありません。
 ここでとりあえずわたしの立場を述べておくと、「原爆投下は許されるものではなく、戦争終結論も口実に過ぎない」というものです。古森氏も、番組ではそのように主張したことになっています*1。日本人の大半はそう思っていると断言していいでしょうし、日米両国以外でも、過半数かどうかはわかりませんが、決して少なからぬ人がこの立場にあると言ってもいいと思います。
 両論がある場合、その双方の妥当性を考えてみるのはとても大切なことです。ふだんの古森さんは対立する論の妥当性をまったく考えられない人なのですが、まあ今回に限ってはできているようなので、それはいいでしょう。しかしこの問題については、「あっちも正しいのかも、正しさは立場によって違うのかも」で済ませられる性質のものなのでしょうか。問われているのは、原爆投下は人道上の罪かという点です。ホロコースト南京大虐殺と少なくとも並ぶ、おそらくはそれ以上、第二次世界大戦史上最悪の、ひいては人類史上最悪の罪悪だと指摘されている行為だということを、古森氏はもっと強く主張できないのでしょうか。彼の文章を素直に読むと、「原爆投下は許されない」という一方の主張さえ、相対化されてしまいそうなのですが。
 あるいはもしかして、古森氏は本音では米国の立場に協調していて、原爆反対という日本人の声は型どおりに紹介しただけなのでしょうか。いくらなんでも、まさかそんな、とは思うのですが。

*1:彼が米国のテレビに出たときになにをどう喋ったかについては、本人の記述はあまり信用できないのですが、13年前の討論番組をネット上で見つけるのはさすがに無理でしょうねえ。