黙然日記(廃墟)

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産経抄、体罰を推奨する。

産経抄】6月18日-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/57579/

 『二十四の瞳』ってそういう話だったっけ? 完全に戦後の視点から、「半人前の教師だけど友達みたいな良い先生」を描いた作品だったという記憶があるけどなあ*1。舞台が昭和初期ならなんでもいいんですかね産経は。引用された内田樹教授の文章が言いたいことは推測できるんだけど、産経抄の引用のしかただとほとんど論旨不明に思えてしまいます。
 でまあ、メインは6月12日付で産経新聞に載った、この「美談」らしいです。

「僕たちの担任やってください」体罰の教諭復職-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/education/56592/

 この記事を見かけたときにblogで取り上げようとしたんですが、「ものすごく気持ち悪い記事だ」と1行書いただけで止まってしまって、続けられませんでした。今でも、気持ち悪さが先に立ってちょっと正視できないぐらいです。日の丸君が代問題に関して、どこかの小学校で「子供たちが校長に土下座を強要した」と産経新聞捏造報道したことがありましたが、その架空の情景が浮かんでくるからかもしれません。情景を見てきたように書いてあるこの記事も捏造でなければいいのですが。
 体罰を正面から論じると長くなりそうなので保留にしておます(原則反対の立場であることは明記しておきます)。ただ肝腎なのは、教師が子供たちに信頼されているかどうかが重要なのであって、その観点からは体罰なんて些末な問題とすら言えるということと、体罰はその信頼を確実に一定の範囲で削るものであり、たまたま削られる以上の信頼を勝ち得ている場合だけ有効なものなのではないか、ということですね。
 この記事は、事実だとしてもごく例外的なエピソードなのであって、それを根拠に教育をどうかしようという産経抄の発想は(教育再生会議あたりにもこれは共通する態度なのですが)、「俺は赤信号で道を渡ったけど死ななかった、おまえも赤信号で渡ってみせろ」と言っている人を見るような感覚です。そうか、論理が通じない人を相手にする気持ち悪さなのか、これは。

体罰教諭復職に多数の声「泣きながら叩かれた」「美談には…」-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/education/57231/

 読者の反応を報じる記事もついでに。ここで最初に引用されている中国在住の男性からの投書は、体罰肯定なんですか? 引用部分だけだと体罰否定にしか読めないんですが。

*1:読んだのは何十年も前なので、こちらの読後感の記憶も怪しいですが、ラストシーンは“記念写真を指さすように”思い出せます。