黙然日記(廃墟)

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産経「正論」、悪趣味を晒す。

【正論】藤岡信勝レイプ・オブ・南京』未刊の理由-イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/seiron/44984/

 同書にある、ここで再引用をはばかられるような残虐描写の引用から始まります。朝からこんなもの読まされる新聞読者の身にもなってください。
 「レイプ・〜」がいろいろ問題のあるトンデモ本*1だということは、間接情報ながら、まあそうなんだろうな、と判断できます。どこにでもトンデモ本はあるわけで、たとえば日本語で「南京虐殺はまったくなかった、犠牲者数はゼロ」と主張する本が出ているのと同じようなものでしょう。ここで藤岡氏が述べているような、事実誤認などの訂正をした上での翻訳版出版を著者が強硬に拒否したということがあったのなら、ジャーナリストとしてのアイリス・チャン氏の行動にも問題はあると思います。
 藤岡氏と東中野修道氏による「レイプ・〜」批判本の翻訳出版を米国の出版社に断られた、ということを恨みがましく述べていますが、はっきりいえばキワモノとして売れた本に何年も経ってから反論本を出せといったって、売れるわけがないから断られますな。そんな大衆市場に向けてではなく、きちんとした英語の論文を書いて米国の歴史学会で発表するようなことはしているんでしょうか。それが学問的に説得力のあるものなら学会の主流になり、大衆や政治家の認識も藤岡・東中野説に沿ったものになっていくことが期待できるし、またトンデモ本が出ても「学会の主流はこうだ」という反論が必ず出るでしょう。なかった論が学会でまともに受け入れられることは無理だと最初からわかっているのかもしれませんが。

*1:本来の「トンデモ」の語義とは違いますが、とりあえずこう表現するのがわかりやすいので。