黙然日記(廃墟)

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政府による出版弾圧か?

講談社:「プリンセス・マサコ」日本版 出版中止を決定
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070217k0000m040090000c.html
 講談社によると、ヒルズ氏は外務省などの抗議を受けた後、日本のメディアの取材に「原書の誤りについて謝罪の必要はない」などと発言したという。同社の矢吹俊吉・学芸局長は「著者の姿勢には問題があり、出版後に起こりうるさまざまな問題に、著者と共同で責任を負うことが出来ない」と話している。

 講談社の言い分も一見正当なように思えます。事実誤認を謝罪できないジャーナリストが信用できないのは当たり前なので。
 しかしMSN毎日インタラクティブのこの記事では、講談社が著者と直接交渉した上で「責任を負えない」と判断したというよりは、他メディアの取材における発言を重視した(という口実で何らかの事情により出版を取りやめた)ようにも読めます。もしそうだとしたら、これはたいへんおかしな話だと思います。日本語版では事実誤認を修正することに合意していたようですし、その際に「日本語版序文」などで経緯の説明をすることまで拒絶したというのは考えにくいのですが。

Japan publisher scraps planned translation of Australian book on royal family - International Herald Tribune
http://www.iht.com/articles/ap/2007/02/16/asia/AS-GEN-Japan-Princess-Book.php
Kodansha editor Kazunobu Kakishima said the decision was in response to Hills' refusal to acknowledge making factual errors during an interview with a Japanese television earlier Friday, causing the publisher to "lose faith" in him as journalist.

 TransNews Annexさん*1経由で知ったインターナショナル・ヘラルド・トリビューンの記事(を機械翻訳で読んだ結果)によると、先週金曜日のテレビ番組によるインタビューを見て出版中止を決めたようですが、ほんとうにそれだけが理由なんでしょうか。毎日記事の矢吹局長とIHT記事のKakishima氏がほぼ同じことを言っているので、これは講談社の公式見解なのでしょうが、唐突な決定に違和感を持たざるを得ません。
 オリジナルの出版社がランダムハウスなので関係の深い講談社が翻訳権を獲得したというだけなのでしょうし、本の内容に賛同して日本語版を企画したわけではないにしても、いったん立ち上げて公表した企画の中止を決めたとき、わずかでも政府の抗議が念頭にあったとしたら、それはたいへん情けない話です。もう少し出版社としての気概を持ってほしいと思います。