黙然日記(廃墟)

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売り家と唐様で書く三代目。

 なんとなく、表題の川柳を思い出す昨今です。初代は努力して貧乏からはい上がりそれなりの財産を築く。二代目は子供のころからその姿を見ているから財産があっても節制するが、自分の子供には教育を与える。三代目はそんなことを知らない、話には聞いていても実感がないから祖父から受け継いだ財産を当然のものと思ってしまい、ついには身代を潰して家を売りに出す羽目になるんだけど、その貼紙を教養豊かな文字で書いてしまう、という笑いです。
 60年前、ゼロからスタートした日本経済を当時の大人たちがなんとか立て直し、その子供世代の我々は親の苦労も見ているし、戦争体験者から直接話も聞いたし、少なくとも経済規模が「世界で何位」から「世界でトップ」になるのは体験してきましたから、感謝する気持ちはあるわけです。いちおう。でも下の世代は、物心ついたころにはすでに「日本がトップ」だったので、それ以外の日本を想像もできないというか考えることもないんだろうなあ、と。
 それが悪いとは言いませんが、可哀想だなと思います。たとえば、高度成長期というものを言葉では知っていても、体感的に理解していないと、少し前の韓国や台湾、今の中国が、あっという間に先進国をキャッチアップして追い抜いていくだろうという事実を認識できなくて、わけのわからない反発をしてしまうのではないか。高度成長ってのは、本当にものすごい成長のことなんですよ。かつてアメリカが日本に対して、その前はイギリスがアメリカに対して、「うちは世界一だ、あんな後進国に何ができるか」と思っていたのと同じように、「韓国や中国に追い抜かされるなんてあり得ない、あっちが追い抜いたというのは捏造だ」と言い張れば満足できるのかもしれませんが、現実を認識できずにいるうちに日本という家を売りに出す羽目にならないことを願います。