黙然日記(廃墟)

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産経湯浅記者の神聖観。

 2/5分です。なんとか追いついたかな。

【湯浅博の世界読解】「すべて日本が悪い」は神聖不可侵の命題なのか(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140205/kor14020514060004-n1.htm

 「命題」とは問いかけの対象となるもので、神聖不可侵だったらそれは命題ではありません。まあそんなことはいいのですが、いくつかの前提を付ければこれは覆らない問いかけです。つまり「日本1600年の歴史のうち大日本帝国時代の特に後期」は、「現在の人類共通の価値観であり第二次世界大戦後の国際秩序すなわち帝国主義ファシズム奴隷制を許さず民族自立と民主主義を尊重する体制」において「悪い」のです。簡単に言えば「戦前日本はファシズム国家だから悪い」です。なんか文句ありますか。これを否定するなら、前述の国際秩序から否定せねばなりません。
 本論に入りましょう。韓国による安重根記念館設立について、「エイブラハム・リンカーン暗殺犯の記念館がカナダに建ったら」というたとえを言い出した米国の学者がいるそうですが(記録するのも面倒なのですがマイケル・オースリンAEI日本研究部長だそうです)、なんの比喩にもなっていないたとえで、言い出した人物および嬉々として引用している人物の知識もしくは知的レベルを疑います。リンカーン暗殺犯は、どこかの民族にとって独立の闘士ですか? リンカーンに敗れた南部諸州の目的、奴隷制の維持は、現在の価値観において正当化されるものですか? その人物の記念館を作るという前提自体がナンセンスであって、誰も賛同しないに決まっています。「だからこの比喩に相当する安重根記念館も建てられるべきではない」というその学者の発言が、いかに詭弁であるかわかろうというものです。日本の(ファシズム時代を正当化する)リビジョニズムに賛同する米国人学者とやらが、いかに怪しげな人物であるかは明らかですね。《「事件が起こって1世紀もたてば、国家はそれを記憶の彼(か)方(なた)に置こうとするものだが、東アジアはそうではない」》という彼の発言も、南北戦争歴史的評価を忘れ去った、ある意味でたいへん危険なものです。米国や南部諸州も奴隷制実施という傷をこの先永遠に背負っていかねばならない存在です。それは、バラク・オバマ時代になっても変わりません。まだ奴隷の子孫は米国大統領になっていませんし、近い将来そうなっても、それで傷が消えることはありません。日本が、やはり傷を負って生きていかねばならぬ存在であるように。
 湯浅東京特派員の文章のうち、導入部に対するツッコミだけで長くなりすぎたので筆を納めますが、全体的にもだいたいこんな代物です。もちろん、湯浅記者や産経になにひとつ期待するものではありませんが、それにしてもこれはひどかった。