黙然日記(廃墟)

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産経抄、疑似科学を批判する。

産経抄】4月21日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/503452/
産経抄】4月21日 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/science/news/110421/scn11042103040000-n1.htm

 簡単にいきます。一言でまとめると「おまえが言うなぁぁぁ〜!(絶叫)」。触れられている『水からの伝言』教育をもてはやしていたのは、どこの新聞ですか。
 まあ、産経が疑似科学似非科学)批判に転じたというなら、それはたいへん結構なことです。願わくば、この筆者一人ではなく社内の意思を統一してほしいものです。仮にも一面コラムでここまで書いたのですから、今後また似非科学を持ち出すようなことがあれば非難の嵐、いや呆れかえられるでしょう。そういう意味で、今日の「産経抄」は記憶すべき1本です。
 「放射能」やあらゆる病気は、日本人の(在来神道的な)感覚として、ケガレとみなされます。ケガレの概念の根底にはおそらく伝染病が存在し、接触によって感染します。「バイキン」という言葉は、生物学的な細菌の概念を無視して、「ケガレ」の同義語として使われます*1。「バイキン」が今回は「放射線」あるいは「放射能」になっただけで、本質は変わっていません。ある人間が「ケガレている」(「汚れている」ではなく)という認識は、同和問題や病者差別、いじめなどに現れるように、差別と人権侵害の根本原因となります。できれば、こうした点にまで踏み込んでほしかったところです。
 ひとつおかしな部分は、「つくば市の職員だから科学に詳しくなければならない」という思いこみです。いくら科学者が多くても、それだけで市職員の知識レベルが向上するわけではありません。もしかしたらここにも、伝染をモチーフにした非合理的感覚が潜んでいないでしょうか。
 あとひとつ、《「冷静に」との政府の呼びかけは信用を失っている》になった原因は、(産経に限りませんが)マスコミによる「放射能怖い」の大合唱ではなかったでしょうか。その点への反省も、見受けられませんね。

*1:「手を洗う」のは伝染病をもたらす病原菌(黴菌)を物理的に落とすためであり、「ケガレ」を落とすために「手を清める」こととは違います。ちょっと水で濡らしただけでは、手は「清め」られますが、「洗う」ことにはなりません。