黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経、成人年齢を考える。

異例の諮問 「18歳成年」で何が変わる?
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/122385
成人年齢国民投票法で定められた18歳以上に引き下げられるとすると、女性は親の同意さえあれば未成年でも結婚できるが、男性は成人になるまで結婚できないという差が生じることになり、男女平等の観点から論争が起こる可能性もある。

 成人年齢を18歳に引き下げることについて、法務大臣法務省法制審議会に諮問をかけることになった、その解説記事です。記事半ばあたりの、ちょっと気になった部分も引用しました。
 まず文章の流れとして、ここに国民投票法が出てくるのが、かなり意味不明です。最近に成立した国民投票法で18歳と定めたから、それと整合性を取るために民法など過去の法律を見直すのであって、この説明を記事の冒頭に入れる必要があるのではないでしょうか。
 それと別に、男女の結婚年齢が違うのは性差別ではないか、という点は昔から指摘され、18歳で揃えるという民法の改正も1996年に法制審議会が答申、少なくとも1997年に、さらにその後も国会に提出されていますが、いまだに成立していません。実は、結婚年齢を18歳にすることに反対している議員はいません(少なくとも表立っては)。議員以外でも、まともな反対論は聞いたことがありません。――明後日の方向の反対論として、「高校生幼妻のラブコメが作れなくなる」というものはありますが(笑)。もちろんこれは、本気で改正反対を唱える意見ではありません。1996年にこの改正が決まりそうになったころ、吉住渉が「ネタが使えなくなる」と思い急いで『君しかいらない』という作品を描いたということがありました*1。このコミックスのトークを見ると、当時すでに「結婚年齢改正は決定事項」という認識が広まっていたことがわかります。
 ではなぜいまだにこの改正が実現していないのかというと、同じ民法改正ということで選択的夫婦別姓制がセットになった改正案が出され、これに一部保守派議員、有り体に言って日本会議を中心とする宗教右派が猛反発しているためです。「家族の価値が崩壊する」とか、例によってよくわからない理屈を述べているのですが、そういう人たちはたぶん、「選択的」という漢字が読めないか、言葉の意味を理解できないのでしょう。あと、夫婦別姓を4000年間続けながらどこよりも強固な家族制度を維持している文明の存在も知らなさそうですね。まあそういう頑迷な反対派が存在して、どう考えても妥当な改正案まで通さないおかげで、時代に合わせた民法改正は、ここ十数年にわたりまったく手つかずの状態になっているわけです。
 解説記事なのですからこのぐらいのことは書いておいてほしいものですが、産経新聞にはなにかこれを書けない理由、書きたくない理由でもあるのでしょうかね。


 もっとも、諮問にかけた法務大臣からして法律のほの字も知らない方のようですから、今回の改正に向けた作業も前途多難が予想されますが……。

鳩山法相また“失言” 12人無罪の鹿児島選挙違反事件「冤罪と呼ぶべきではない」 
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/122426

*1:結果的には12年後に描いても間に合ったわけですが、いま描いていたらどうなっていただろう。当時「りぼん」で描いてくれてよかった、とわたしは評価していますが。