パソ通時代。
上記の記事には全面的に感服するのですが、一つだけ指摘させてください。コメントにしようかと思ったけど長くなるのでこちらで。
kitano氏はインターネットの匿名性の起源をNTT回線開放以後、いわゆるパソコン通信に求めていますが、はたしてそうだろうか。
パソ通には大きく分けて大手商用ネットと草の根ネットがありました。大手と草の根の違いはおおざっぱに言えば有料か無料かで、有料の大手ネットでは(少なくとも管理者には)身元を明かさなければならなかったのに対して、無料の草の根ではたとえばいくらでも複数IDを取得できたり、現在の匿名ネットに近い状況がありました。パソ通カルチャーの半分はこうした匿名ネットワークから生まれてきたのは確かです*1。
しかし、ユーザの数は当然ながら大手ネットが圧倒的に多かったわけです。大手ネットで特に人数を集めていたのがPC-VANとNIFTY-Serveですが、当時の知名度や料金システムからPC-VANが最初は優位に立っていたものの、やがてNIFTYが大きく参加者数を伸ばしていきました。その背景には、匿名性が強かったPC-VANに対して、NIFTYが全般的に実名主義をとることが多かった*2ゆえの安心感があったのではないかと思います。後発ながら実名主義を徹底したASAHI-Netが急成長を遂げたのも、これと関係あるのではないでしょうか。
草の根系からネットに入っていったわたしとしては、NIFTYやASAHIの実名主義が『感覚的に』気持ち悪かったので、特にその点が印象に残っているのかもしれませんが。
国策としてどうだったかは、なんとも言えません。考えたこともなかったけれど、匿名主体のネットカルチャーは国の制御が及ばない草の根から生まれ、インターネット普及期にヘビーネットユーザが定着させたものだということは言えると思います。