黙然日記(廃墟)

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産経野口記者の神話観。

 6/9分です。この日付を見てふと思いついたことがあるのですが以下略。

【軍事情勢】中朝韓人民を支配する「神話」(1/4ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140609/kor14060911050001-n1.htm

 新聞休刊日ですがSANKEI EXPRESSは出ているので、こうしてのぐっちこと野口裕之記者の「軍事情勢」が読めます。前回は正論でどうしたのかと思ったのですが、今回は期待を裏切らない出来ですね。「マッカーサーによる遺伝子組み換え人間」にはかなわないものの、ちゃんと《民族のDNA》なるものも出てきます。中国の外事委員会主任委員が「神話」という言葉を用いて安倍晋三首相を批判したことに反発し、いやいや我らが安倍閣下は神話を打ち砕く立場だ、「非武装中立」という神話を打破し(いまどき誰がこんなこと主張しているんでしょうか。「中立」の意味わかってますか?)、「集団的自衛権は戦争をする権利」という神話を破ろうとしている(どう見ても戦争をしたいがための行使容認なんですが)、と、ここまでならまあ熱狂的安倍信者の妄言ということでいいでしょう。しかし、中国・北朝鮮・韓国をまとめて、国民に「神話」を信じ込ませようとしている、というあたりから、のぐっちの妄想が入ってきます。いや、毛沢東「神話」や金日成「神話」が事実と異なる、という指摘までは、これはまったく正しいものです。しかし、まず、韓国政府が国民に神話を信じさせようとするような行動を、なにか執っているでしょうか。近現代史における「神話」でも、文字通りの神話でも。なぜここで、韓国が全体主義諸国と一緒にされて叩かれているのか、まるでわかりません。根拠も示されていません。同盟国に対する誹謗中傷としか思えないのですが、なぜこういうことをいつまでも続けるのでしょうか。
 まず、朝鮮の始祖伝説である檀君神話が素朴な神話に過ぎないことは言うまでもありません。それを歴史的事実かのように捏造しようとする北朝鮮の姿勢を批判するのは当然です。しかしその勢いで、中国に対して《「四千年の歴史」が怪しい》とやらかしているのは大失敗です。なんのまともな根拠も示せていないし、王朝交代の意味も理解していないようです。考古学的証拠も無視していますね。解説すると、三皇五帝(人面蛇身のひととかいます)の神話時代から数えて「中国五千年」という言い方がありますが、もちろんこれは科学的ではありません。しかし、人間が王朝を啓いたとされる約4000年前から文明が続いている、という言い方には、無理がありません。考古学的にも、文字こそないものの陶器や農耕の証拠が、4000年よりはるかに古いものが残っています。メソポタミア8000年、エジプト7000年、インダス4000年の文明史を考えれば、黄河文明4000年の歴史(さらに長江文明の存在)を想像するのは自然です。これを無根拠呼ばわりするのは、無知にもほどがあるというものです。知識もなければ調べもせず、「王朝交代があったから文明が継続していない」。じゃあエジプトの歴史はクレオパトラから始まるのか……いやもう、ばかばかしくてこれ以上相手にできません。
 そして当然のごとく、日本の神話だけ肯定するのですね。檀君神話を否定するなら、「天照大神神武天皇を歴史教科書に載せろ」と主張する勢力も叩くべきなのですが、日本神話だけは《「日本人としての価値観の源泉」で普遍性を伴う》なのだそうです。もう触るのも嫌になるのですが、最後にのぐっちは、檀君は雌の熊(熊の化身というべきでしょうね)と結ばれて子孫を残した、その血が金王朝にも流れているというのなら、金王朝は熊の子孫か。と書いてドヤ顔しています。してやったり、ぐらいのつもりなのでしょうね。さて、日本の正史である『日本書紀』、のぐっちが《価値観の源泉》とする、産経新聞が教科書に載せ子供たちに史実として教えたがっている日本神話によれば、神武天皇の祖母はワニ(サメ)です Wikipedia:トヨタマヒメ。さあ、どうするんですか野口さん。とにかく、国民に対して神話を史実とするおかしな歴史を押しつけようとしているのは北朝鮮産経新聞だけだということを、のぐっちは認識すべきでしょう。