そこに人がいるから。
pr3氏「被曝と差別問題への返答」-被曝を避ける努力がなぜ福島への差別になるのか？ - Verda Majo 緑の五月通信
http://d.hatena.ne.jp/takamm/20110926/1317061332
takammさんからトラックバックをいただきましたが、どうも議論がかみ合っていない気がします。これはわたしが参加する議論ではいつものことなので（原因は明白ですね）、個別のレスより、まずは勝手にこちらの考えを述べさせていただくことにします。
差別とは「人の心を傷つける行為」です。それは、意図的であるか否かを問いません。「差別しているつもりはなかった」がなんの言い訳にもならないのはご承知のとおりです。
差別とは、「自分の意思で変えられない条件によって不利な扱いを受けること」です。出生、性別、本名、身体的･精神的条件、さまざまなケースが当てはまります。「ある一定期間、一定の地域に住んでいた」、具体的には「３･１１から数日〜十数日間あるいはそれ以後も、福島第一原発の近くに居住していた」もそれにあたります。
意図しない差別は、一見合理的な説明を付与し、正当化を図ります。「これは○○という理由があるから差別ではない」。しかしその理由は、実は不合理であり、単に差別を正当化するためだけにあるものです。「福島から転入してきた子の持ち物に放射性物質が付着していたら、遠ざけられてもやむをえない」。一見合理的です。しかし、持ち物の放射線検査がされていないということがありえるでしょうか。転入先のためではなく、その子自身のために。
差別している側は、それを差別と顕在的には意識していないことが多いのです。しかしその場合でも、される側、「あっち側」にいる人間は、常にそれを意識せざるを得ません。
このへんから、個別のお返事になっていきます。
分割統治は、常に差別感情を利用して行われます。区別し分割するだけでは、分割統治は成り立ちません。問題は分割ではなく、差別感情です。
本来、悪いのは事故を起こした東電であり事故に至る状況を放置した政府です。彼らを責めるなとは、わたしはひとことも言っていません。ただ、それとまったく別の問題を考えているつもりですが、なにか誤解させる点があったでしょうか。takammさんが、その点で何か見えない敵と戦っているのでなければ幸いです。
東電と政府を責めるのは「正しい行為」ですが、正しい行為は一つではありませんし、一つの「正しい行為」に加担しないからといって、それは「間違い」ではありません。念のため付け加えますが、東電と、（事故に対応する現政府はともかく）過去の原発行政を擁護したことは、事故以来一度もありません。
≪放射能汚染に境は存在しない≫（から「こっち側」「あっち側」の分離はナンセンスだ）とおっしゃりながら、福島近県の農作物を買うか？ と質問されている意図を測りかねます。ちなみに先日宮城米を買って、今食べています。さすがササニシキで鳴らす米どころ、妙に安かった特売品とはいえ、たいへん美味です*1。
花火大会を中止した町の問題について徹底的に論じるべきだとされていますが、それを論じるのに「汚染源」である福島の花火工場の話を出したら、問題を≪疎かにしたまま≫≪ルール違反としか言いようのない例示≫とおっしゃっているくだりは、まるっきり理解できません。例示とか話題逸らしではなく、完全にイコールの問題だとしかわたしには思えないので、takammさんがなにをおっしゃっているのかも理解不能なのです。
ひとつだけ可能性があるとしたら（いつも産経を読んで無理な解釈をするときの癖が出ています）、農産物の話を含めてtakammさんは「福島に生きる人間のことは絶対に考えてはならない」と思っていらっしゃる可能性ですが、これは確実に間違いでしょう。したがって、理解不能です。
いくつかの質問に、まとめてお答えします。takammさんの質問は、「人に対する差別」と「モノに対する忌避」を、混同していらっしゃいます。モノに対する忌避を（個人的なものであれば）、わたしは否定していません。なぜ、その先にいる人間について考えないのだろう、と問うているのです。これは、エントリタイトルへの答えにもなっているかと思います。
リンク先の「非国民通信」さんのエントリを読んだ感想は、「あれは間違ってるがこれは正しい」です。どこがどうと具体的に述べてもあまり意味はないでしょう。ただ、コメントやトラックバックの意見を、そのSPAM性ではなくその内容によってdisる姿勢については、わたしはあまり快く思いません。たとえそれがどんな意見であっても。
これは一般論として、何かの意図を持って他人をdisる、東電を擁護するために相手をヘイターと呼ぶ人もいれば、被害地域の人々を同胞と思うがゆえに東電の責任を後回しにする、結果としてその場では東電を利する人もいるでしょう。「東電攻撃こそが唯一の正しい行為」と考える立場からは同じに見えるかもしれません（繰り返しますが一般論です）。ただわたしは、そこは切り分けて考えるので、“そういう人から”同じに見られても、ちっともかまいません。
国とか企業とか、どーでもいい存在です。生きている人間に比べたら。
