黙然日記(廃墟)

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産経の春闘対応。

【主張】春闘 雇用維持が最優先課題だ - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/224305/

 そうですね。現時点での、春闘に限らず社会・国家・世界経済レベルでの最重要課題は雇用確保だとわたしも思います。経営側(日本経団連)もそのように主張し、雇用維持のための賃下げやワーキングシェア導入を提案しています。産経の主張も、この経営側主張とまったく同じです。
 ところで、労働側(連合等)は、この春闘でどのような方針を掲げているのでしょうか。この「主張」を読むと、ベースアップなど賃上げを主張しているようです。消費者の所得向上が内需拡大・景気回復につながるという主張も、それなりに正当なものてしょう。しかし、労働者団体が雇用確保にまったく言及していないというのなら、実に困ったものです。――というのが産経の「主張」の内容です。
 実際の労働側の主張は、賃上げだけなのでしょうか? 

論点かみ合わず交渉へ 賃上げと雇用めぐり - イザ! (2009/02/18 10:36)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/223221/
「雇用も、賃上げも」とベースアップ(ベア)要求する労働側に、経営側は雇用の確保すら努力目標にとどめ賃上げは強く否定。論点がかみ合わないまま交渉に入った。

 雇用確保はあたりまえの前提で、その上に賃上げを、と労働側は主張しています。経営側および産経は、賃上げをするなら雇用確保ができない、賃下げで雇用確保する方が良心的ではないか、としているわけですが、ここには根本的な前提の欠如があります。人件費の総額がそのままあるいは減額なら、賃上げは雇用削減とイコールになりますが、労働側の要求はそうではなく、人件費全体を増やせ、そうしないと内需拡大にならない、としているわけです。ぶっちゃけこれも虫のいい話だと感じますが、要求を高めに掲げて落としどころを探るということだろうと思います。新自由主義(裸の資本主義)の矛盾が噴出した今の時点だからこそ、人件費総額の増大という要求には意味があるでしょう。経営側はもちろん、世界的経済危機による経営不安を持ち出していますが、むしろこの8年間に削りすぎていた人件費を元の水準に戻せというだけの話です。*1
 現在の圧倒的な世論は、雇用確保最優先、派遣切りを許すな、という方向でしょう。労働側がそれを無視して(正社員の)賃上げだけを求めているかのような印象を受ければ、世論は労働側(連合、労組一般)に反発すると思われます。この産経「主張」、あるいは産経紙面に掲載された春闘記事のほとんどは、この印象操作の線でまとめられているのです。正直、個人的には春闘とほとんど無縁なので関連記事も読んでいませんでしたが、あらためて過去記事をさかのぼってみると、ひどいわこれは。連合の方針を取り上げているのは上記の記事と他1本*2だけ、それも記事のほとんどは連合側への批判です。産経新聞は(一般紙としての)創刊経緯が経緯で、その後もずっと財界寄りの立場であることは言うまでもないし、いまさら中立を求めることもないのですが、それにしてもこれは。

【土・日曜日に書く】論説委員・石川水穂 共産党が正論を唱えた時期
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/090221/kor0902210347000-n1.htm

 関係あるようなないような。石川委員が評価しているのは、共産党が80年代後半に北朝鮮拉致疑惑を追及していた件についてです。それ以外はまるで評価できないかのように言っているわけですが、たとえば現在の雇用問題でも先頭に立っていると言えるでしょう*3。もちろん上記のように、産経としてはそれを認めないのでしょうが。

*1:今回の連合方針に全面賛同するわけではありません。物価上昇を賃上げの根拠に持ち出しているのは、完全な戦術ミスでしょう。いまさら指摘するまでもありませんが、連合も恐竜化しているな、と。

*2: http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/223454/

*3:たとえばdj19さんが紹介している、「しんぶん赤旗」の労働問題まとめ記事など。http://d.hatena.ne.jp/dj19/20090220/p1