黙然日記(廃墟)

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産経と議員団の対馬視察、他。

【コラム・断】「変」な時代来る
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/dan/206399

 20日付の産経新聞「断」は、同紙に「私の正名論」も連載している呉智英氏でした。「変態とは変態性欲(異常性欲)の略」とは、呉氏らしからぬ間抜けな発言ですね。毛虫が蛹、蛹が蝶に状態を変化させることも「変態」と言います。『広辞苑第四版』*1によれば「もとの姿・形をかえること。また、その姿・形」が原義で、『菅家文草』に用例が見えるようです。菅原道真ですね。それが「正常ではない状態」の意味で使われるようになり、「変態性欲の略」としても使われるようになりました。これは昔の人の感覚で(今もあるていど通じると思いますが)「性欲」という言葉を口に出せないため「変態」だけで通してしまい、さらに「変態」が性欲と結びついた言葉になってしまったのでさらに略して「H(エッチ)」と表現するようになりました。ここで注意しておきたいのは、一般に言う「変態」には量的異常(過剰性欲)が含まれるという点で(学問的には区別されるのですが)、生殖には結びつくけれどそれが行き過ぎている場合も「変態」と称するのです。少なくとも「変態」がこの意味で使われるようになったころは、質的異常よりも過剰性欲に対して(といっても、他人より少し性的好奇心が強いだけといった状態にも揶揄を含めて)用いられていたことは、呉氏もご承知なのではないでしょうか。『広辞苑』でも「エッチ」の語義は「性に関する言動が露骨なさま」としています。まあ、露骨に話すこと自体が質的異常だと言われたらそれまでですが。
 それはそれとして、「変」という漢字を見て真っ先に「変態」を思い出すことも、ある種の変態ではないでしょうかね。
 以下余談。「H」の語源が「変態」であることから、ご存知の方はご存知かと思いますが、思わぬ混乱を招きました。日本の「Hなマンガ」が海外にそのまま伝わり、「"H"ッテナンダロウ」「ニホンゴノジショヲミルト、"Hentai"ノリャクトカイテアルヨ」といった経緯で(たぶん)、ちょっとHなだけのMANGAやANIMEも「Hentai MANGA」などと呼ばれるようになってしまい、日本語話者が見ると頭が痛くなるような状況が続いています。"Ecchi"を推奨する動きもあるのですが、やはり"Hentai"が定着してしまっているようで。某新聞社サイトが性的な英文記事のmetaタグに"Hentai"を入れていたことから、その新聞社を「変態新聞社」と呼ぶ人がたくさんいるようですが、日本語→英語の誤解に英語→日本語の誤解が積み重なった経緯を知っていると、滑稽以外の何物でもありませんね。

対馬が危ない!】 議員団、現地視察で驚いた! 韓国資本の買収地は旧日本軍港だった
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/206517

 先日予告されていたとおり、20日に議員団が対馬を「現地視察」した模様を、例によって宮本雅史編集委員が伝えています。配信時点では上記の見出しでしたが、現在は「対馬で議員団が驚いた!韓国資本の買収地は旧日本軍港」となっています。タグを外されると後で面倒になるから、やめてくれないかなあ。
 物見遊山 視察の内容ですが、議員たちがもっとも関心を持ったのは、例の韓国資本ホテルが旧軍用地跡に建てられており、今でも軍港として使えるという点だそうです。……妄想もたいがいにしてください。包丁でも鉛筆でも人は殺せるし、船着き場があればすべて軍港として利用「可能」なのです。
 議員団メンバーの名前が宣伝されているので、少し手を加えて晒しておきますね。▽平沼赳夫(無所属)▽衛藤晟一山谷えり子西田昌司山内俊夫谷川弥一赤池誠章(以上、自民)▽松原仁▽山根隆治▽山田正彦石関貴史(以上、民主)▽有村治子参院議員(自民)は秘書が出席


 ちなみに、同じ視察団を伝える西日本新聞の記事はこちら。西日本の見出しにある地元の要望は、産経記事ではまったく触れられていません。こちらでは山谷えり子議員の発言が中心で、再来年の選挙に向けて名前が売れて良かったですね。議連を乱発したかいがあったというものです。

対馬の「国防」超党派視察 地元は活性化策要望 / 西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/66864

*1:フリーで使える『広辞苑』がないので、まだ机の横に置いてある紙の版で調べました。「変態」とか「性的倒錯」とか「エッチ」とかを広辞苑で調べていると、中学生のころを思い出しますね。