黙然日記(廃墟)

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産経、門真市『君が代』不起立問題でまた捏造。

 最初にお断りしておきますが、このエントリは門真市市議会議員の戸田ひさよし氏にコメント欄でいただいた情報、およびサイトの掲示板にあった情報に大きく依っています。また戸田氏は、一連の記事を書いた産経新聞の松本記者との面談内容も掲示板で紹介されています。貴重な情報をいただいた戸田氏に感謝いたします。*1

報道経緯の整理。

国歌斉唱で起立の卒業生、1人だけ 教員指示か - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/education/133163

 iza!に配信されたこの記事を最初に読んだとき、ちょっと引っかかったのですが、産経ではよくある記事と思いペンディングにしていました。国旗国歌が事実上強制になる前は、「どこそこの学校で卒業式に日の丸を掲揚した」といった記事が朝日新聞によく載っていたので(当時は他紙との比較が難しかったので独自記事だったのかは不明ですが)、その裏返しという感覚です。この手の持ち込みネタが(主に地方版で)一紙独占になるのは、一般的にもよくある話ですし。しかしこの記事の問題は実は、見出しにもありますが「教員指示か」という決めつけをしている点です。
 上掲の記事はiza!では03/27 15:15に配信されていますが、3/27付および3/28付の産経新聞東京本社版には(わたしが見落としたのでなければ)掲載されていませんでした。

「子供への影響、深刻に受け止める」 集団不起立問題で大阪府教育長 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/education/133352

 こちらは03/28 02:31に掲載されたもの。04/02にも関連記事が掲載されたようですが、これも東京本社版にはなかった(あったとしても小さな扱いだった)ようですし、iza!およびMSN産経ニュースにもありません。実は意外なところで読めます。

国歌斉唱不起立 担任全員、指導認める 門真の第三中 - 産経関西
http://www.sankei-kansai.com/01_syakai/sya040205.htm

 ていうかうかつな話で申し訳ないんですが、産経新聞東京本社のMSN産経ニュースと別に、大阪本社が独自のサイトを持っていて、かなり充実したニュースサイトになっていることに、今まで気づいていませんでした。

産経関西 Sankei-Kansai
http://www.sankei-kansai.com/

 MSN産経などのローカルニュース枠とは別に運営されていますが、リンクがまったく見あたらず、産経新聞社自体のサイト http://sankei.jp/ にぽつんとリンクがあるだけです。東京本社と大阪本社、よっぽど仲が悪いんだろうか。
 東京本社版の紙面ではこのニュースがまったく報じられていないことになるのですが、なぜか 03/30付の「主張」では、この件が既知の話題として扱われています*2

一連の記事の問題点。

 繰り返しますが、一連の報道での産経の捏造は、「教師の指示があった」という決め付けです。捏造、少なくとも憶測であって証拠がないことをわかっているからか、どの記事でも「〜と思われる」「〜可能性がある」のオンパレードです。
 ここでいきなり私見を述べますと、実は『君が代』問題はあまり重視していません。「強制でないことが望ましいですね」よりはもうちょっと踏み込んで、ぐらいのポジションです。国立学校の卒業式なら国歌斉唱があった方がいいんじゃないか、とさえ思っています。もちろん、市立中学校なら国歌ではなく市歌を斉唱するべきでしょう*3。ただ、この産経の報道姿勢にも見られるように、『君が代』問題は象徴的な意味が(特に推進側に)あるので、その意味で要注意のトピックだとは思います。
 引き続きわたくしごとですが、中学時代の思い出話をします。えこひいきをする教師がいて皆の憤懣が溜まっていたとき、一人のクラスメイトが「次の○○先生の授業をみんなでサボろう」と言い出しました。それは面白いと、クラスの9割ぐらいが旧校舎に集まって、授業をボイコットしてしまいました。わたし自身はえこひいきされる側だったのでやや複雑だったのですが、言い出しっぺも同じ立場で(後に生徒会長になったぐらいで、人望もありました)、義憤に駆られての行動なんだなと判断し、参加することにしました。世間にはまだ学生運動の記憶が残っている時代ではありましたが、わたしたちの周囲にそんな雰囲気はなかったので、彼がなぜボイコットを発想したのかはよくわかりません。
 門真市の件で、教師が不起立を《指示》したのか、「起立しなくてもいいんだ」と《知識を与えた》のかは、、表面的な行動からは判断できません。ただ、主導的な生徒が“空気"を作れば、教師の命令より強いということだったのではないかなあ、と思います。逆にそうでなければ、第二反抗期の子供たちがほぼ全員、教師の《指示》に唯々諾々と従うことはありえないんじゃないでしょうか。*4
 とりあえず産経報道の事実関係はおおむね正しいものとして(それすら不起立教諭の数など一部間違っていたようですが)、同じ不起立といっても、『君が代』斉唱のためにわざわざ起立するという指示に従わず座ったままでいるのと、それまで起立していた状態で斉唱の指示と同時に着席するのでは、行動としてかなり意味が違います。前者なら、いわゆる荒れた学校で(管理側)教師の指示に従わなかったとも考えられますが、後者は明確な意思表示でしょう。それをする“勇気"が、一部の教師の《指示》だけで生まれるものでしょうか。不起立派の教師による《指示》以前に、校長レベルの指導、あるいは社会全体の“空気"として「卒業式では厳粛に起立して国歌斉唱」とされているわけですから、それを覆す《指示》はかなり強いものであったはずです。しかし4/2の記事では、そんな《指示》はなかったことが明らかになっており、この時点で産経の捏造は破綻しているんですね。もちろん、過去の産経の捏造報道の例からして、訂正も謝罪もしない、捏造があったことすら認めないのでしょうが。

*1:戸田氏の公式サイト http://www.hige-toda.com/ の「ちょいマジ掲示板」。厳密に言うと、コメント欄に書き込んでくださった方が戸田議員ご本人と確認できているわけではないのですが、まあたぶん問題なさそうなので、というアバウトな方針で。

*2: http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/133815/

*3:戸田氏によると、産経の松本記者は「学校の教師は国から税金もらって生活している」と発言したそうで、国と自治体の区別がついていないんだろうと思います。地方参政権への認識もそうですが、“公"を声高に言い立てる人ほど、“公"に区別があることを理解していないですね。

*4:起立した子も含めて172人全員が、自分で判断したのか、空気に従ったのかは不明ですが、ここで「“空気"で動く怖さ」をいちおう指摘しておきます。もちろんこれは、「教師の指導があった」という産経の捏造とはまったく別の問題です。この“空気"で動いた可能性については、戸田氏と松本記者の問答の中で指摘されています。