黙然日記(廃墟)

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古森義久氏、古森氏への批判を叩く。

朝日新聞が「日本の国益」主張を叩く――NHK国際放送で「日本」を主張するな、とは - ステージ風発:イザ!
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/528326

 朝日新聞古森重隆NHK経営委員長を批判したことに対する、古森義久産経新聞編集特別委員による反論です。もしかしたら、古森氏は古森氏への批判が許せなかったのでしょうか。そんなばかな、とは思いますが*1
 該当の朝日新聞記事はこちら。3月26日付の社説でした。

「国際放送で国益主張を」 NHK経営委員長、執行部に - asahi.com
http://www.asahi.com/culture/tv_radio/TKY200803240414.html
NHK委員長―国の宣伝機関にするのか - asahi.com
http://www.asahi.com/paper/editorial20080326.html#syasetu2

 以下、古森blogから引用しつつ批判します。「どの国の海外放送もその国の実態を反映しています」と言っていますが、だいたい、中国などの国営放送が自国政府のプロパガンダになっていることを、もっとも強く批判しているのが産経新聞じゃなかったでしょうかね。古森氏自身、米国の自由アジア放送が、政府や議会から独立した民間放送であることをやたらと強調していましたよね*2
 と思ったらその後で、現時点での自説を補強すべく、「北京放送が中国の主張を伝え、平壌放送北朝鮮の主張を伝えても、両国が独裁国家であっても、その放送がその国の主張を正確に表明しているという点では放送メディア自体への信頼が失われることはないでしょう」とまで強弁しています。古森氏はどうやら、NHK独裁国家の国営放送にしてしまいたいようですね。
 「まさに朝日新聞は「日本」という概念が嫌いのようです」だそうですが、朝日が嫌いなのはおそらく、「国境」という概念でしょう。「ある存在は、世界の中の一つであること、ほんの一つでたった一つ」という考え方は、「世界に冠たる日本」といった考え方とは対極にあり、どちらかを信じている人はもう一方を(ほとんどの場合)理解できないと思うのではないでしょうか。理解できないのはしかたないのですが、「(俺が)理解できないから根本的に間違っている」という批判のやり方は、どうもあまり論理的とは言えません。
 冒頭近くにある「朝日新聞は日本に関しては、国家や政府は国民とは別の場に立ち、国民の意思を表さず、国民をむしろ抑圧する存在であるかのようにとらえているのです」という文章が、この長い記事を要約しているようです。いちいち説明するとこちらも長くなってしまうので結果だけ述べますが、まず「国家は国民を統治する」という前提があって、その中で国民側の権利を守るいちばんマシな体制が民主主義であり、国民が国家を監視する方法を規定して国家側を縛るのが憲法であり、報道は権力の監視が役割とされるのです。古森氏はたぶん、どれも根本的に理解していないんだと思いますが。
 このエントリは古森氏の、国家(特に民主国家)への理解、報道への理解が、如実に表れた事例かと思います。


 「国益」という言葉を、“保守派"はよく持ち出します。ここで“保守派"と括弧付きで表記したのは、正確な意味での「保守派」(現状の保守を主張する一派))とは言えないからで、多少なりと過去への後戻りを主張する(日本において戦後を否定するなどの)人々は、きちんと「反動派」と呼ぶべきでしょう
 さてあらためて記述しますが、この反動派は、「国益」という言葉をよく持ち出します。彼らの唱える「国益」とは「日本国の利益」を意味するはずですが、むしろ最高法規に平和・民主・人権を掲げる日本国に害をなす主張であることが多いのです。そこで彼らの唱える「国益」を「(自分たちの)権益」に置き換えてみると、なんということでしょう。たいへんわかりやすくなるんですね。*3


 ていうかぶっちゃけ、朝日の社説の方を読んでください。頻出する「古森氏」という単語を、重隆さんではなく義久さんのつもりで読んでも、まったく違和感がありません(笑)。《古森氏》に対する「国益」の概念や報道機関のあり方に対する無理解への批判が、そのまま当てはまってしまいます。
 実業家で経営者としてNHKに乗り込んできた古森重隆氏が、経営以外のことにうといのはしかたないかもしれませんが(報道機関の経営者としては不適任、少なくとも不勉強ではあります)、報道者としての経歴が明日で45年を迎える古森義久氏が、門外漢と同レベルに見えてしまうというのは、たいへん困った話です。

*1:同姓で世代も政治姿勢も似ている二人ですが、血縁関係などはない、そうです。以下、単に「古森氏」と書いたら原則として古森義久氏を指します。

*2: http://d.hatena.ne.jp/pr3/20080316/1205661115 参照

*3:この節は http://d.hatena.ne.jp/pr3/20080328/1206706254#c におけるid:GI17さんおよび保守主義者さんとの議論を踏まえています。貴重なご教示をくださったお二方に感謝します。