産経「主張」、人権擁護法を警戒する。
【主張】人権擁護法案 再提出の必要があるのか - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/122892/
人権擁護法案は今もっともホットなテーマのひとつであるし、わたし自身が人権問題に関心を持ち表現の自由をなにより重視する立場を表明しているわけですが、実は不勉強で今のところ賛否を表明できるほどの知識がなかったりします。あわてて勉強中です。ただ現時点では、産経が反対しているなら賛成しておいた方が間違いなさそうだなあ、というのが率直な感想です。
そんなわけで、人権擁護法案に慎重論を唱える産経「主張」を、眉につばをつけながら読んでみました。
そもそも、警察や検察以外に、人権委員会のような機関を設ける必要があるのか、極めて疑問である。
警察・検察が人権を守ってくれないから、第三者機関が必要だと言われるのではないのかな。というか、警察・検察による人権侵害を食い止める対策が喫緊の必要であることは、先だっての鹿児島冤罪事件で証明されていると思うのですが。
この指摘というのがよくわからなかったのでぐぐってみたのですが、「朝鮮総連の手先が人権委員会に入れば」という前提の極論しか見あたりませんでした。在日朝鮮・韓国人への(一般論として在住外国人への)差別が重大な人権侵害であることは国際的な認識であり、在日外国人を人権委員会のメンバーにすることは適切だろうと思うし、仮にその人が「経済制裁は人権侵害だ」という暴論*1を言い出しても、その暴論がそのまま通るなら、なんのために複数のメンバーで議論するのかわかりません。
この極論を強く主張しているのが拉致被害者を救う会(正確に言えば拉致問題に巣食う会)で、産経やネトウヨはそれをまに受けて反対しているようですが、本気でこんなことを言っているとしたら、巣食う会というのはいったいどういう組織なのでしょう。仮定に仮定を重ねた藁人形を叩いているとしか思えないのですが。解放同盟などへの(適切な)批判も人権侵害として扱われる、という危惧も唱えているのですが、それなら巣食う会への批判も同じことになるのではないでしょうかね。
さらに「金正日を批判したら在日朝鮮人を傷つけたとして人権侵害とされる」と解説したサイトを見つけて、これには大笑いしてしまいました。「福田首相は定見がなく政治家として無能」と述べたら、日本人全体を傷つけたことになり処罰されるんでしょうか。たしかに、そんな法律ができたらたいへんな事態ですが、そんな事態がそもそもあり得るのかどうか、常識で考えるということはしないんでしょうかね*2。
ネトウヨが撒き散らすコピペを見ていると、「人権委員会に在日外国人が入ったら言論の自由が侵害される」というものが目立ちます。要するに巣食う会も同じことを言っているのでしょうが、「ヘイトスピーチをする自由」があるのかどうか、少しは考えてみたらどうでしょうか。*3
人権擁護法が成立するかどうかは、実はどうでもいい問題でもあります。もっとも重要なのは人権を擁護することそのものであり、人権擁護の認識を高めることです。そのために立法レベルでまず必要なのは、死刑や代用監獄の廃止などでしょう。そして、国家のためなら人権を踏みにじってもかまわない(国防政策維持のために被害者少女を誹謗することなども含めて)という言説を撒き散らす一部メディアが、深く反省することなのではないでしょうか。